EntryNavigation
11月。木枯らしはチャイムを鳴らす
PR
「ようやく前田さん辞めたんだって?」
自分の机で書類を作っていると同僚が声をかけていた。
「あぁ、ようやく、だな。」
自主退職と勧告だけで済ましてあげるなんて優しいじゃん。と言われたが、実際にレイプ被害が起きたわけでないからあれが精一杯だと返す。
幸いと言うか、かろうじてと言うか、翠は今はところ無事だ。
今のところ、だ。
掲示板の書き込みだって消されたのは最近で、未だに翠の周辺には不審者がウロウロしている現状だ。
なるべく葵さんのところに泊まるようお願いしているが、葵さんのところにいつまでもお世話のになるわけにいかないし、隣人のシャインスターに出来る限り気をつけてやってくれとお願いしているが、毎日シャインスターがいるわけでもないので、心配は尽きることがない。
距離の離れてる現状にもどかしい思いをしていると、上司から東北方面の出張を打算された。
拠点を仙台にある支店にして、2週間程行ってほしいとの言葉に一も二もなく承諾する。
ほっと息を吐くと、上司に「佐藤さんのこと、十分気をつけてあげるんだよ。」と言われる。
どうやら気を使われていたらしい。
ありがたさに頭が下がる。
「翠、2週間よろしく頼む。」と声をかけると、「いえいえ、大したおかまいも出来ませんが、こちらこそよろしくお願いします。」と、翠は笑って部屋に招き入れてくれた。
翠との新婚にも似た生活はひたすら楽しかったが、朝夕の電車の中で、翠に手を伸ばそうとする輩が多いことに閉口するしかなかった。
いつもは女性専用車両に乗ってやり過ごしていたらしいのだが、翠の不安を考えると側にいれなかったことに後悔の念しか沸かなかった。
そんな中、同僚から電話が入る。
『前田さんに気をつけるんだよ。どうやら逆恨みしてるようだから。』同僚はあれからあの女のグチッターや、ブログを監視していたらしい。正直ありがたいが、そのスキルは一体どこで拾得しているのか不思議だ。俺が探した時は全然見つける事が出来なかったのに。
深夜ドンドンドンと、ドアを叩かれる。
「すいませーん。サトウミドリさんのお部屋ですかー。消防署の方から来た者です。夜分遅くにすいませーん。ドア開けてくださーい。」
ドアスコープを覗くが、姿を見られないように隠れているのか姿を確認する事ができなかった。
翠に携帯を持っていつでも通報出来るようにして隠れてろ、と指示をしてドアを開けると、数人の男達がニヤニヤしながら立っていた。
「なんの用ですか?」と尋ねると、
「あ?なんで男いんの?もしかして、もぅ始まってた?オレ達も混ぜてよ。」とニヤニヤしながらドアに手をかけようとする。
「なんの用かと聞いている。それにあんたら、消防員じゃないだろう。」なるべく平坦な声で話そうと思うが、いらだちで声が震える。
「はぁ?ミドリちゃんが寂しいから、お部屋でHしようって提案してきたんじゃねーか。自分が先に来たからって独り占めすんなよ。」と強引に部屋に入ろうとするので、その腕を捕まえて「どなたかとお間違えではありませんか?」と尋ねる。
「あぁ!?ミドリちゃんからメールくれたんだろ?その証拠にメールだって残ってんよ。」と、男は携帯の画面を開いて見せた。
【仙台在住のぉ、ミドリですぅ。
最近、寒くなってきたしぃ、人肌が恋しぃ。゜+(。ノдヽ。)゜+。
誰かミドリをあっためてほしぃな。即ヤリoK☆
連絡待ってまーす(*ゝω・*)ノ ×××@××××.××.××】
【ぉ返事ぁりがとぅ。
今日はミドリ、すっごいエッチな気分なんだ(*≧Δ≦)
だからたぁっくさんの人にアィして欲しぃな(〃・ω・〃)
お部屋は仙台市○○ ○○アパート3-3だょ。
合い言葉に消防の方から来たって言ってね☆
でないとドァ開けなぃよ(`Д´)
ぁと、ミドリとのメールは削除してね!!お・や・く・そ・く(ゝω∂)☆】
「な?俺らも招待客ってこと。どいてよ、色男のおにーさん。」
印籠のようにスマフォをかざす男。
「翠、警察に通報しろ。不審者が来たって。」
「はぁ!?なに言ってやがる。」男が慌てて逃げようとするのを捕まえる。
外にいた数人の男達も逃げようとするが、シャインスターに阻まれて逃げ出せないようだ。
「ダークネスファング!悪ノ組織成敗デスネ!?シャインスターの正義ノ鉄拳ヲ喰ラウトイイデス!」
シャインスターと二人で男達と格闘していると、階下から警察官が走ってきて取り押さえられた。
俺とシャインスターもろとも。
・・・つい、怒りに任せてぶん殴ってたからなぁ・・・・まぁ、反省していないが。
警察署でことのいきさつを説明すると、いくら数人いたから暴力振るったにしても、君のそのガタイで殴られたら君が加害者側になってしまうよと諭される。
好きな女一人守れない男よりはマシじゃないかと思うのだが、長居したくないので反省したフリをする。
別室にいた翠に会うと、泣きながら心配していた。
なんでドア開けちゃうのとか、俺がケガするんじゃないかと怖かったとか、まぁ、いろいろ。
最後の「ありがとう」という翠の声に翠が無事で良かったと神に感謝する。
俺が居るときで良かった。・・・・本当に。
後日、前田明美を強姦教唆で逮捕したと警察から連絡があった。
自分の机で書類を作っていると同僚が声をかけていた。
「あぁ、ようやく、だな。」
自主退職と勧告だけで済ましてあげるなんて優しいじゃん。と言われたが、実際にレイプ被害が起きたわけでないからあれが精一杯だと返す。
幸いと言うか、かろうじてと言うか、翠は今はところ無事だ。
今のところ、だ。
掲示板の書き込みだって消されたのは最近で、未だに翠の周辺には不審者がウロウロしている現状だ。
なるべく葵さんのところに泊まるようお願いしているが、葵さんのところにいつまでもお世話のになるわけにいかないし、隣人のシャインスターに出来る限り気をつけてやってくれとお願いしているが、毎日シャインスターがいるわけでもないので、心配は尽きることがない。
距離の離れてる現状にもどかしい思いをしていると、上司から東北方面の出張を打算された。
拠点を仙台にある支店にして、2週間程行ってほしいとの言葉に一も二もなく承諾する。
ほっと息を吐くと、上司に「佐藤さんのこと、十分気をつけてあげるんだよ。」と言われる。
どうやら気を使われていたらしい。
ありがたさに頭が下がる。
「翠、2週間よろしく頼む。」と声をかけると、「いえいえ、大したおかまいも出来ませんが、こちらこそよろしくお願いします。」と、翠は笑って部屋に招き入れてくれた。
翠との新婚にも似た生活はひたすら楽しかったが、朝夕の電車の中で、翠に手を伸ばそうとする輩が多いことに閉口するしかなかった。
いつもは女性専用車両に乗ってやり過ごしていたらしいのだが、翠の不安を考えると側にいれなかったことに後悔の念しか沸かなかった。
そんな中、同僚から電話が入る。
『前田さんに気をつけるんだよ。どうやら逆恨みしてるようだから。』同僚はあれからあの女のグチッターや、ブログを監視していたらしい。正直ありがたいが、そのスキルは一体どこで拾得しているのか不思議だ。俺が探した時は全然見つける事が出来なかったのに。
深夜ドンドンドンと、ドアを叩かれる。
「すいませーん。サトウミドリさんのお部屋ですかー。消防署の方から来た者です。夜分遅くにすいませーん。ドア開けてくださーい。」
ドアスコープを覗くが、姿を見られないように隠れているのか姿を確認する事ができなかった。
翠に携帯を持っていつでも通報出来るようにして隠れてろ、と指示をしてドアを開けると、数人の男達がニヤニヤしながら立っていた。
「なんの用ですか?」と尋ねると、
「あ?なんで男いんの?もしかして、もぅ始まってた?オレ達も混ぜてよ。」とニヤニヤしながらドアに手をかけようとする。
「なんの用かと聞いている。それにあんたら、消防員じゃないだろう。」なるべく平坦な声で話そうと思うが、いらだちで声が震える。
「はぁ?ミドリちゃんが寂しいから、お部屋でHしようって提案してきたんじゃねーか。自分が先に来たからって独り占めすんなよ。」と強引に部屋に入ろうとするので、その腕を捕まえて「どなたかとお間違えではありませんか?」と尋ねる。
「あぁ!?ミドリちゃんからメールくれたんだろ?その証拠にメールだって残ってんよ。」と、男は携帯の画面を開いて見せた。
【仙台在住のぉ、ミドリですぅ。
最近、寒くなってきたしぃ、人肌が恋しぃ。゜+(。ノдヽ。)゜+。
誰かミドリをあっためてほしぃな。即ヤリoK☆
連絡待ってまーす(*ゝω・*)ノ ×××@××××.××.××】
【ぉ返事ぁりがとぅ。
今日はミドリ、すっごいエッチな気分なんだ(*≧Δ≦)
だからたぁっくさんの人にアィして欲しぃな(〃・ω・〃)
お部屋は仙台市○○ ○○アパート3-3だょ。
合い言葉に消防の方から来たって言ってね☆
でないとドァ開けなぃよ(`Д´)
ぁと、ミドリとのメールは削除してね!!お・や・く・そ・く(ゝω∂)☆】
「な?俺らも招待客ってこと。どいてよ、色男のおにーさん。」
印籠のようにスマフォをかざす男。
「翠、警察に通報しろ。不審者が来たって。」
「はぁ!?なに言ってやがる。」男が慌てて逃げようとするのを捕まえる。
外にいた数人の男達も逃げようとするが、シャインスターに阻まれて逃げ出せないようだ。
「ダークネスファング!悪ノ組織成敗デスネ!?シャインスターの正義ノ鉄拳ヲ喰ラウトイイデス!」
シャインスターと二人で男達と格闘していると、階下から警察官が走ってきて取り押さえられた。
俺とシャインスターもろとも。
・・・つい、怒りに任せてぶん殴ってたからなぁ・・・・まぁ、反省していないが。
警察署でことのいきさつを説明すると、いくら数人いたから暴力振るったにしても、君のそのガタイで殴られたら君が加害者側になってしまうよと諭される。
好きな女一人守れない男よりはマシじゃないかと思うのだが、長居したくないので反省したフリをする。
別室にいた翠に会うと、泣きながら心配していた。
なんでドア開けちゃうのとか、俺がケガするんじゃないかと怖かったとか、まぁ、いろいろ。
最後の「ありがとう」という翠の声に翠が無事で良かったと神に感謝する。
俺が居るときで良かった。・・・・本当に。
後日、前田明美を強姦教唆で逮捕したと警察から連絡があった。
閑話 初任給の使い方
同僚「そういえばミドリちゃんに指輪買ってあげた?」
昼飯を食いながら問いかけてきた同僚。
総一郎「・・いや、買おうとしたら翠にいらないって言われた。」
同僚「へぇ、珍しい。なに?金属アレルギー?」
総一郎「金属アレルギーもあるようだが・・・こだわりというか・・まぁ、あってな。」
同僚「え。なになに?どんなこだわり?」
総一郎「硬度と溶解温度だ。」
同僚「・・・・はい?」
総一郎「金や銀は火災にあうと大抵変形するらしい。プラチナは原型とどめてるのが多いらしいが、金属の理想はタングステンらしい。石も同様だな。色が剥脱したり、変わったりするから石メインにしてるのはあまり好きじゃないそうだ。むしろ石はなくていいらしい。」
同僚「タングステン!?いや、でもアレって、リングカッターでも切れないってよく聞くよね?」
総一郎「あぁ、『それが問題なんですよね』って、翠も言ってた。それにデザインもこだわりがあってだな。名前がガッツリ入ってるのがいいらしい。イニシャルよりフルネームが好ましいそうだ。」
同僚「Soichiro to Midoriとか?文字数多いね。ホビットの持ってる指輪みたいになっちゃいそう。てか、ソレ結婚指輪じゃん?」
総一郎「あぁ、だから俺がそれはあげるからって言っておいた。」
同僚「あっそ、ごちそうさまです~。いやぁ、小林君がのろけるなんて明日は槍が降るねぇ。」
総一郎「のろけか?指輪贈ること承諾させるの大変だったんだぞ?なんせ、翠、初任給で耐火金庫買うつもりだったからな?」
同僚「・・・・は!?・・・小林君、まさかバレてた?」
総一郎「・・・バレてたら俺に他社の耐火金庫と、どっちかいいかなんて聞かないだろう。真剣に仕様を検討してたよ。ダイアル式とシリンダー錠のどちらかで悩んでるらしいが、ダイアル式がロマンがあるそうだ。」
同僚「ごめん。ダイアル式にロマンとか僕、感じたことないわ。」
総一郎「奇遇だな。俺もだ。」
翠の欲しがってた耐火金庫は俺の親父に相談することにした。
さすがに初任給での買い物が耐火金庫って悲しすぎる。
『泥にまみれてても、金庫の中に入れてれば原型留めてるんですよ。
私ね、大事なものはちゃんと保管するべきなんだって実感したんです。
貸金庫も考えたんですけど、中身が写真とかって恐れ多いというか、入れてもいいんですか?って感じで・・・家庭用の耐火金庫にしようと思ったんです。』と、真剣に仕様書を見る翠。本気で購入を考えているのだろう、簡易のから業務用のまで幅広い金庫の仕様書の束があった。
「親父んとこに中古あるらしい。希望とかあるなら言ってみたら?」
と電話を翠に渡すと、翠は驚きながらも電話を受け取って親父と話していた。
最初は自分で買うから結構です。と話していたのだが、親父と仕様について詳しく話しているうちに鍵のロマンを楽しそうに話していた。
主流はテンキー式かもしれないが、それだとロマンがないじゃないですかって・・・すまん。翠、俺にはダイアル式も、テンキー式も、シリンダー錠も、磁気ロックも、指紋認証も皆一緒に見える。
なににロマンを感じるのか全く分からないのだが、同じようにロマンを感じているらしい親父に「いいの見つけておくから楽しみにしてて。」と上機嫌で電話を切られた。
翌週、翠の小さなアパートに耐火金庫が届く。
配送業者2名がかりで運ばれてきた60㌔の耐火金庫。
「こ、これはっ、耐火3時間、防水仕様の業界最高峰の高遠製鋼の耐火金庫っ。
えぇぇ!?ものすごい高い物ですよ?受け取れませんよ。どうしよう。」と、おろおろしている翠を尻目に、受領書にサインして配送業者を帰す。
「総一郎さん、どうしましょう。受け取れないです。配送業者さんもう一度呼んでください。」と、涙目の翠に「余ってるものだから。倉庫で腐らしてるより翠 が使ってくれた方がいいんだよ。それに配送業者帰しちゃったし。」と納得させる。が、翠がどうしても礼がしたいと言うので一緒に大吟醸買いに行き宅配で頼 んだ。
晩に「大吟醸が届いた」との電話がお袋からかかってきた。
翠が何度も何度もお礼を言う。
「あらあら、いいのよぅ。そこまで喜んでくれたらお父さん喜ぶわぁ。
こちらこそお酒ありがとうねぇ。うふふ、今日はお父さんと一杯飲んじゃうわぁ。」と電話口からお袋の声が漏れ聞こえる。
翠はひたすら礼を言い、しばらくして電話を切ると、翠が静かに泣いてた。
「・・・翠?・・・どうした?お袋になんか言われたのか?」
驚いて問いただすと、翠はどこか焦点のあってない目をしながらしばらく泣き続けた。
「・・・思い出したんです。
兄が初めての給料で両親にお酒を贈ってたの。
すごい喜んでくれてて、私も就職したら最初に両親にお酒を贈ろうって思ったの思い出しちゃって・・・・。
・・・ありがとうございます。総一郎さん。私の夢、一つ叶った気がします。」
涙を流す翠を抱きしめながら、改めて大事にしようと決意した。
昼飯を食いながら問いかけてきた同僚。
総一郎「・・いや、買おうとしたら翠にいらないって言われた。」
同僚「へぇ、珍しい。なに?金属アレルギー?」
総一郎「金属アレルギーもあるようだが・・・こだわりというか・・まぁ、あってな。」
同僚「え。なになに?どんなこだわり?」
総一郎「硬度と溶解温度だ。」
同僚「・・・・はい?」
総一郎「金や銀は火災にあうと大抵変形するらしい。プラチナは原型とどめてるのが多いらしいが、金属の理想はタングステンらしい。石も同様だな。色が剥脱したり、変わったりするから石メインにしてるのはあまり好きじゃないそうだ。むしろ石はなくていいらしい。」
同僚「タングステン!?いや、でもアレって、リングカッターでも切れないってよく聞くよね?」
総一郎「あぁ、『それが問題なんですよね』って、翠も言ってた。それにデザインもこだわりがあってだな。名前がガッツリ入ってるのがいいらしい。イニシャルよりフルネームが好ましいそうだ。」
同僚「Soichiro to Midoriとか?文字数多いね。ホビットの持ってる指輪みたいになっちゃいそう。てか、ソレ結婚指輪じゃん?」
総一郎「あぁ、だから俺がそれはあげるからって言っておいた。」
同僚「あっそ、ごちそうさまです~。いやぁ、小林君がのろけるなんて明日は槍が降るねぇ。」
総一郎「のろけか?指輪贈ること承諾させるの大変だったんだぞ?なんせ、翠、初任給で耐火金庫買うつもりだったからな?」
同僚「・・・・は!?・・・小林君、まさかバレてた?」
総一郎「・・・バレてたら俺に他社の耐火金庫と、どっちかいいかなんて聞かないだろう。真剣に仕様を検討してたよ。ダイアル式とシリンダー錠のどちらかで悩んでるらしいが、ダイアル式がロマンがあるそうだ。」
同僚「ごめん。ダイアル式にロマンとか僕、感じたことないわ。」
総一郎「奇遇だな。俺もだ。」
翠の欲しがってた耐火金庫は俺の親父に相談することにした。
さすがに初任給での買い物が耐火金庫って悲しすぎる。
『泥にまみれてても、金庫の中に入れてれば原型留めてるんですよ。
私ね、大事なものはちゃんと保管するべきなんだって実感したんです。
貸金庫も考えたんですけど、中身が写真とかって恐れ多いというか、入れてもいいんですか?って感じで・・・家庭用の耐火金庫にしようと思ったんです。』と、真剣に仕様書を見る翠。本気で購入を考えているのだろう、簡易のから業務用のまで幅広い金庫の仕様書の束があった。
「親父んとこに中古あるらしい。希望とかあるなら言ってみたら?」
と電話を翠に渡すと、翠は驚きながらも電話を受け取って親父と話していた。
最初は自分で買うから結構です。と話していたのだが、親父と仕様について詳しく話しているうちに鍵のロマンを楽しそうに話していた。
主流はテンキー式かもしれないが、それだとロマンがないじゃないですかって・・・すまん。翠、俺にはダイアル式も、テンキー式も、シリンダー錠も、磁気ロックも、指紋認証も皆一緒に見える。
なににロマンを感じるのか全く分からないのだが、同じようにロマンを感じているらしい親父に「いいの見つけておくから楽しみにしてて。」と上機嫌で電話を切られた。
翌週、翠の小さなアパートに耐火金庫が届く。
配送業者2名がかりで運ばれてきた60㌔の耐火金庫。
「こ、これはっ、耐火3時間、防水仕様の業界最高峰の高遠製鋼の耐火金庫っ。
えぇぇ!?ものすごい高い物ですよ?受け取れませんよ。どうしよう。」と、おろおろしている翠を尻目に、受領書にサインして配送業者を帰す。
「総一郎さん、どうしましょう。受け取れないです。配送業者さんもう一度呼んでください。」と、涙目の翠に「余ってるものだから。倉庫で腐らしてるより翠 が使ってくれた方がいいんだよ。それに配送業者帰しちゃったし。」と納得させる。が、翠がどうしても礼がしたいと言うので一緒に大吟醸買いに行き宅配で頼 んだ。
晩に「大吟醸が届いた」との電話がお袋からかかってきた。
翠が何度も何度もお礼を言う。
「あらあら、いいのよぅ。そこまで喜んでくれたらお父さん喜ぶわぁ。
こちらこそお酒ありがとうねぇ。うふふ、今日はお父さんと一杯飲んじゃうわぁ。」と電話口からお袋の声が漏れ聞こえる。
翠はひたすら礼を言い、しばらくして電話を切ると、翠が静かに泣いてた。
「・・・翠?・・・どうした?お袋になんか言われたのか?」
驚いて問いただすと、翠はどこか焦点のあってない目をしながらしばらく泣き続けた。
「・・・思い出したんです。
兄が初めての給料で両親にお酒を贈ってたの。
すごい喜んでくれてて、私も就職したら最初に両親にお酒を贈ろうって思ったの思い出しちゃって・・・・。
・・・ありがとうございます。総一郎さん。私の夢、一つ叶った気がします。」
涙を流す翠を抱きしめながら、改めて大事にしようと決意した。
********************************************
総一郎「・・・親父、ありがとうな。」
親父「喜んでくれたかい?翠ちゃん。・・・いい娘じゃないか、大事にしろよ。」
総一郎「・・・分かってる。じゃあな。」
------------------------------------
親父「母さん、母さん、総一郎からお礼なんて言われちゃったよ!」
お袋「あらあらあら、お父さんったら。良かったわねぇ。・・やぁねぇ泣いちゃって、歳とると涙腺って弱くなるのねぇ。」
親父「喜んでくれたかい?翠ちゃん。・・・いい娘じゃないか、大事にしろよ。」
総一郎「・・・分かってる。じゃあな。」
------------------------------------
親父「母さん、母さん、総一郎からお礼なんて言われちゃったよ!」
お袋「あらあらあら、お父さんったら。良かったわねぇ。・・やぁねぇ泣いちゃって、歳とると涙腺って弱くなるのねぇ。」
10月。ゴミはゴミの日に
「ダークネスファング!悪ノ組織来マシタ!成敗シタライイデスカ!?」
「落ち着けっ!翠は無事なのか!?」
19時30分。シャインスターからの電話に衝撃を受けつつ、状況を聞き出していく。
シャインスター曰く、翠につきまとう悪ノ組織は日に日に数を増し、ついにはアパート近辺まで姿を見せ始めたらしい。
前に行った時に表札は取り払ってきたので部屋の特定はまだのようだが、隣であるシャインスターの部屋に悪ノ組織らしき人物が訪ねてきたとの事。
・・・シャインスターの部屋はカーテンもインテリアもピンク色。いかにも女性の部屋に見えるから間違えたのだろう。
すぐさま翠に電話をして無事を確かめる。
「大丈夫・・・ですよ?でもちょっと気味悪いです。」
「なにかあったらすぐ俺に電話しろ。家に帰る時もだ。
誰か訪ねてきても無視しろ。宅配便だとしてもだ。本物なら不在通知入れておくハズだから、後で呼んで受け取ればいい。どうしてもドアを開ける時はドアチェーンしろ。」
その他にも、いろいろと注意してくれと言って電話を切った。
あぁ・・・くそ、すぐ行ける距離にいないことが悔しい。
「小林君どうしたの。めっちゃ顔怖いんですけど。」
「翠のアパートまで悪の組織が来ているらしい。」
「悪の組織?」
いかん。動揺している。
同僚に状況をかいつまんで説明する。
「プロバイダはIPの開示と書き込みの削除に応じた?」
「いや、弁護士を通しているがのらりくらりとのばされてる。」
話しをしながらもカタカタとキーボードを叩く同僚。
「他のサイトにも書き込んでるね。・・・ひどいな。小林君はこれ、名誉毀損で止めるの?たぶん強姦教唆までいけると思うよ。女の子だし。」
「・・・あぁ、お前の場合、男だから適用されないってツッパネられたんだっけか。」
「ひどいよねー。男でも女でも被害に会ったら傷つくのに。はい、コレ。SSとログ。頑張って!僕の分もやっちまいなー!」
「すまん、助かる。
しかし、お前の分って・・お前、相手の男ボコボコにしたじゃないか。過剰防衛手前だったって俺は聞いたぞ。」
「いいじゃん?どうせキモい顔だったし、鼻が右向いていようが、左向いていようが大差ないよ。」
受け取ったUSBメモリを手に弁護士に連絡すべく席を立つ。
それから相談してた上司に声をかけ、午後に本人召喚の上、勧告をすることに決める。
庶務室に行き、あの女に15時にミーティングルームに来るよう告げると、あの女は「きゃっ、なんですぅ?デートのお誘いなら会社よりレストランの方が嬉しいんですけどぉ。」と、まつげをパチパチと鳴らしながら言いやがった。
自分がやってることがバレてるなんて思いもしないのだろうか。
バカすぎる。
15時。
弁護士、上司とともにミーティングルームで待っていると、10分も遅れてあの女が部屋に入ってきた。
「ごめんなさぁい、髪の毛がきまらなくってぇ」などと言いながら入った女は、俺以外にも人がいることに気がついてギョッとしていた。
甘ったるい香水の臭いが漂ってきて、更に気分が悪くなる。
「前田明美さんですね?初めまして。弁護士の渡邉と申します。佐藤翠さんに対する名誉毀損と強姦教唆の件で話し合いにまいりました。どうぞ、席にご着席を。」
弁護士が着席を促す。
そこからの会話は思い出すだけで頭痛がするほどひどいものになった。
あの女はそんなの知らない、自分ではない、証拠がないなど言っていたが、翠の名を騙って男を煽る写真とプリントアウトされた掲示板の文章、会社PCのログを前に頭を垂れた。
ぐずっ、ぐずっ、と鼻を鳴らしながら泣いて謝罪していたが、会社を自主退職すること、翠に近づかないことを告げると髪を振り乱して「なんでそこまでしなく ちゃいけないの!?ごめんって謝ってるじゃない!どうせあのミドリムシだって、ウリくらいやってんでしょ!?親が死んでるんだからっ。」と、暴言を吐い た。
カッとなって思わず立ち上がろうとするのを、隣の上司に腕を捕まれて止められる。
弁護士の「警察に行くことだって出来るのですよ?慰謝料も請求しない、大した温情だと思っていたのですが、これではそれも出来そうにありませんね。」と冷静な言葉に、あの女は顔を蒼白にした。
・・・疲れた。
あぁ、翠に会いたいなぁ。
「落ち着けっ!翠は無事なのか!?」
19時30分。シャインスターからの電話に衝撃を受けつつ、状況を聞き出していく。
シャインスター曰く、翠につきまとう悪ノ組織は日に日に数を増し、ついにはアパート近辺まで姿を見せ始めたらしい。
前に行った時に表札は取り払ってきたので部屋の特定はまだのようだが、隣であるシャインスターの部屋に悪ノ組織らしき人物が訪ねてきたとの事。
・・・シャインスターの部屋はカーテンもインテリアもピンク色。いかにも女性の部屋に見えるから間違えたのだろう。
すぐさま翠に電話をして無事を確かめる。
「大丈夫・・・ですよ?でもちょっと気味悪いです。」
「なにかあったらすぐ俺に電話しろ。家に帰る時もだ。
誰か訪ねてきても無視しろ。宅配便だとしてもだ。本物なら不在通知入れておくハズだから、後で呼んで受け取ればいい。どうしてもドアを開ける時はドアチェーンしろ。」
その他にも、いろいろと注意してくれと言って電話を切った。
あぁ・・・くそ、すぐ行ける距離にいないことが悔しい。
「小林君どうしたの。めっちゃ顔怖いんですけど。」
「翠のアパートまで悪の組織が来ているらしい。」
「悪の組織?」
いかん。動揺している。
同僚に状況をかいつまんで説明する。
「プロバイダはIPの開示と書き込みの削除に応じた?」
「いや、弁護士を通しているがのらりくらりとのばされてる。」
話しをしながらもカタカタとキーボードを叩く同僚。
「他のサイトにも書き込んでるね。・・・ひどいな。小林君はこれ、名誉毀損で止めるの?たぶん強姦教唆までいけると思うよ。女の子だし。」
「・・・あぁ、お前の場合、男だから適用されないってツッパネられたんだっけか。」
「ひどいよねー。男でも女でも被害に会ったら傷つくのに。はい、コレ。SSとログ。頑張って!僕の分もやっちまいなー!」
「すまん、助かる。
しかし、お前の分って・・お前、相手の男ボコボコにしたじゃないか。過剰防衛手前だったって俺は聞いたぞ。」
「いいじゃん?どうせキモい顔だったし、鼻が右向いていようが、左向いていようが大差ないよ。」
受け取ったUSBメモリを手に弁護士に連絡すべく席を立つ。
それから相談してた上司に声をかけ、午後に本人召喚の上、勧告をすることに決める。
庶務室に行き、あの女に15時にミーティングルームに来るよう告げると、あの女は「きゃっ、なんですぅ?デートのお誘いなら会社よりレストランの方が嬉しいんですけどぉ。」と、まつげをパチパチと鳴らしながら言いやがった。
自分がやってることがバレてるなんて思いもしないのだろうか。
バカすぎる。
15時。
弁護士、上司とともにミーティングルームで待っていると、10分も遅れてあの女が部屋に入ってきた。
「ごめんなさぁい、髪の毛がきまらなくってぇ」などと言いながら入った女は、俺以外にも人がいることに気がついてギョッとしていた。
甘ったるい香水の臭いが漂ってきて、更に気分が悪くなる。
「前田明美さんですね?初めまして。弁護士の渡邉と申します。佐藤翠さんに対する名誉毀損と強姦教唆の件で話し合いにまいりました。どうぞ、席にご着席を。」
弁護士が着席を促す。
そこからの会話は思い出すだけで頭痛がするほどひどいものになった。
あの女はそんなの知らない、自分ではない、証拠がないなど言っていたが、翠の名を騙って男を煽る写真とプリントアウトされた掲示板の文章、会社PCのログを前に頭を垂れた。
ぐずっ、ぐずっ、と鼻を鳴らしながら泣いて謝罪していたが、会社を自主退職すること、翠に近づかないことを告げると髪を振り乱して「なんでそこまでしなく ちゃいけないの!?ごめんって謝ってるじゃない!どうせあのミドリムシだって、ウリくらいやってんでしょ!?親が死んでるんだからっ。」と、暴言を吐い た。
カッとなって思わず立ち上がろうとするのを、隣の上司に腕を捕まれて止められる。
弁護士の「警察に行くことだって出来るのですよ?慰謝料も請求しない、大した温情だと思っていたのですが、これではそれも出来そうにありませんね。」と冷静な言葉に、あの女は顔を蒼白にした。
・・・疲れた。
あぁ、翠に会いたいなぁ。
*********************************************************
同僚「過剰防衛手前っていっても、鼻と足折って、頬骨陥没させた程度だよ。」
総一郎「それ、十分過剰防衛じゃないか?」
同僚「きっと元の顔が酷すぎてケガにカウントされなかったんだよ。」
総一郎「それ、十分過剰防衛じゃないか?」
同僚「きっと元の顔が酷すぎてケガにカウントされなかったんだよ。」
9月。ヤスを探せ
「やだっ、小林君ったらミドリちゃんを監視!?」
通りすがりに俺の画面を見た同僚がおどけて言う。
「気持ち悪いこと言うな。・・・翠が掲示板に晒されているんだ。」
一瞬にしていつもへらへらしてる同僚の顔から表情が抜け落ちる。
「本人が書きこんでるってことはないよね。」
「無いな。携帯はキッズモードだし、タブレットに関しては俺がたまに見てる。」
「そか・・・分かった。」そう言って同僚は翠を検索していく。
無言で検索をかけていくと、しばらくして同僚が「HITした・・・出会い系だね。」
さすが定期的に自身を検索しているだけあって早い。
以前、元カノにネットで中傷を受けた同僚はあれから過剰に警戒するようになった。
翠にいろいろと注意したのは同僚を見て学んでいたからである。
「・・・これ、庶務の前田さんじゃない?」
掲載されている画像を拡大する。
「うまく顔隠してあるけど、この時計、前にカレシに買ってもらったって食堂で自慢してたやつだよね。」
ラインストーンでゴテゴテに飾られたスマフォを持つ腕に特徴的なロゴの時計。
・・・・あの女。
「見て見て!こないだのデートで〇〇〇の新作の時計買って貰っちゃったぁ!」
「えーーっ。すっごーい。いいなぁ。見せて、見せてー。」
少し離れた席から聞こえてくる声に上司が苦笑いしながら「あの時計、30万するんだよねぇ。」と言う。
「うはっ、高っ、なんで値段知ってるんですか!?」
「嫁にね、結婚記念日にコレ欲しいってねだられちゃって。おかげでお財布が軽いよ~。」
「う~わぁ・・・ご愁傷様です。」
「でも嫁さん喜んでたからねぇ。しかし、今のご時世はデートのプレゼントレベルなんだねぇ。頑張ってね、独身の諸君!」
「いやいやいや、そんな高額なプレゼントほいほいあげれないっスよ。」
そんな上司と同僚の会話を聞きながら飯を食っていたのを思い出した。
「・・・ミドリちゃんの顔写真出てる。これって社員証のかな。名前と最寄駅も晒されてる・・・悪質だね。」
「証拠ssは撮れるか?」
「撮ってる。プロバイダに発信者情報開示請求と削除申請出した方がいいね。時間帯が勤務時間のもあるから会社PCのログも取ったほうがいいよ。」
「すまんな。イヤなこと思い出させて。」
休憩室で同僚に缶コーヒーを渡す。
同僚は誹謗中傷の他にゲイサイトにまで書きこみされていた。
『恋人募集!』という書き込みに反応したゲイに路地裏に連れ込まれそうになって、某カンフースターのマネをして難を逃れた。
「フー様の完コピしてなかったら、僕のケツ死んでたかもしれん。」と蒼白な顔で報告してきたのが一昨年前の夏。
今では忘年会などで黄色いトラックスーツを着てアチョー!などと言いながら笑いを取れるまで回復したと思っていたのだが。
「いやいや、大丈夫だよ~。それに小林君のことカレシって言って逃げてたことあるし。恩は返せる時に返さないとね。」
「!?」
通りすがりに俺の画面を見た同僚がおどけて言う。
「気持ち悪いこと言うな。・・・翠が掲示板に晒されているんだ。」
一瞬にしていつもへらへらしてる同僚の顔から表情が抜け落ちる。
「本人が書きこんでるってことはないよね。」
「無いな。携帯はキッズモードだし、タブレットに関しては俺がたまに見てる。」
「そか・・・分かった。」そう言って同僚は翠を検索していく。
無言で検索をかけていくと、しばらくして同僚が「HITした・・・出会い系だね。」
さすが定期的に自身を検索しているだけあって早い。
以前、元カノにネットで中傷を受けた同僚はあれから過剰に警戒するようになった。
翠にいろいろと注意したのは同僚を見て学んでいたからである。
「・・・これ、庶務の前田さんじゃない?」
掲載されている画像を拡大する。
「うまく顔隠してあるけど、この時計、前にカレシに買ってもらったって食堂で自慢してたやつだよね。」
ラインストーンでゴテゴテに飾られたスマフォを持つ腕に特徴的なロゴの時計。
・・・・あの女。
「見て見て!こないだのデートで〇〇〇の新作の時計買って貰っちゃったぁ!」
「えーーっ。すっごーい。いいなぁ。見せて、見せてー。」
少し離れた席から聞こえてくる声に上司が苦笑いしながら「あの時計、30万するんだよねぇ。」と言う。
「うはっ、高っ、なんで値段知ってるんですか!?」
「嫁にね、結婚記念日にコレ欲しいってねだられちゃって。おかげでお財布が軽いよ~。」
「う~わぁ・・・ご愁傷様です。」
「でも嫁さん喜んでたからねぇ。しかし、今のご時世はデートのプレゼントレベルなんだねぇ。頑張ってね、独身の諸君!」
「いやいやいや、そんな高額なプレゼントほいほいあげれないっスよ。」
そんな上司と同僚の会話を聞きながら飯を食っていたのを思い出した。
「・・・ミドリちゃんの顔写真出てる。これって社員証のかな。名前と最寄駅も晒されてる・・・悪質だね。」
「証拠ssは撮れるか?」
「撮ってる。プロバイダに発信者情報開示請求と削除申請出した方がいいね。時間帯が勤務時間のもあるから会社PCのログも取ったほうがいいよ。」
「すまんな。イヤなこと思い出させて。」
休憩室で同僚に缶コーヒーを渡す。
同僚は誹謗中傷の他にゲイサイトにまで書きこみされていた。
『恋人募集!』という書き込みに反応したゲイに路地裏に連れ込まれそうになって、某カンフースターのマネをして難を逃れた。
「フー様の完コピしてなかったら、僕のケツ死んでたかもしれん。」と蒼白な顔で報告してきたのが一昨年前の夏。
今では忘年会などで黄色いトラックスーツを着てアチョー!などと言いながら笑いを取れるまで回復したと思っていたのだが。
「いやいや、大丈夫だよ~。それに小林君のことカレシって言って逃げてたことあるし。恩は返せる時に返さないとね。」
「!?」
***************************************************
同僚「ミドリちゃん、キッズケータイなんだ。」
総一郎「通話とメールしか使わないからいいらしい。デザインが可愛い上にライト付。防犯ブザーで安全。落としてもイマドコサーチで安心。なにより防水なのだと力説していた。」
総一郎「通話とメールしか使わないからいいらしい。デザインが可愛い上にライト付。防犯ブザーで安全。落としてもイマドコサーチで安心。なにより防水なのだと力説していた。」
お盆。掛け軸の裏に回転扉はない
盆に翠とシャインスターを実家に連れて行くと、出迎えたお袋と弟に「え。どっちがカノジョなの。」と驚かれる。
どう見ても翠しかいないだろうが。
実家に着くとシャインスターのテンションがだだ上がりで、「Japanese classical house! ニンジャ!ニンジャハ ドコニイマスカ!!」と、天袋や畳まで開けようとするので落ち着かせるのが大変だった。
うちには隠し扉も隠し階段もない。
掛け軸を何度めくっても回転扉どころか、御札もないぞ。
翠はひたすら恐縮していたが、お袋にあれこれと絡まれているうちに2人でキャッキャッと仲良く飯を作りはじめてた。和む。
うちの家族は父、母、俺、妹、弟の5人。
お袋が150㎝台でちんまりしているのだが、他の家族は揃って170㎝越えと、なかなかに威圧感があることは自覚している。
そんな中でお袋より少し身長の高い翠がお袋と仲良くおしゃべりしているのを見ていると、ついつい頬が緩む。
親父を見ると、俺と同じようにニヤニヤしていた。
「お前にしてはいい嫁見つけてきたじゃないか。」と珍しく褒められた。
院生の妹が夜遅くに帰ってきたのだが、妹を一目見たシャインスターが大騒ぎした。
「オーシャンブルー!?オーシャンブルー!!What? ダークネスファング is sister? Oh my God! I can't belive it! I met my fate.」
「なんなの?このチャラい外国人。」
妹の目がまるで虫を見るようだった。
気持ちは分かるが、せめて人として扱ってくれ。これでも人間としては良い分類だと思う。
翠に対しては一目見るなり「可愛い!お兄ちゃん!よくやったわ!きゃああ、すっごい好みなんですけど!一緒に服買いに行こう!?デートしよう!」と、はしゃぎまくっていた。
おい・・・妹よ・・・それは俺のだ。
弟に肩をぽんぽんと叩かれて慰められた。
休みの間、翠は俺の部屋に寝る予定だったが、お袋と妹に「女同士でいいじゃん。」と客間に布団を並べられ寝ることになった。
そして客間に寝る予定だったシャインスターが俺の部屋で寝ることになった。
・・・シャインスターの妹に関する質問がうざい。
全て「本人に聞いてくれ。」と答えていると、これは運命だの、日本に来て良かっただの、神様に感謝するだの熱に浮かされたようにぼやきはじめたので無視して寝た。
翌日、シャインスターが妹の後をついてまわるので、妹がキレた。
「うるさい、うざい、しつこい!私、コミケとか行かないから。それになんなのよ。オーシャンブルーって、変な名前で呼ばないでよねっ。」
妹にどれだけ冷たくされても、無視されても、罵倒されても懲りずについてまわるシャインスター。
さすがヒーロー、メンタル強い。
墓参りの日、シャインスターはコミケに行く為に、あちこちに羽根のついた真っ白なスーツを着て、お袋に化粧を施されていた。
「宝塚みたいねぇ。楽しいわぁ。」と、お袋もノリノリである。
俺と翠にも一緒にコミケに行こう!と誘っていたが、翠用の衣装だというやたらとフリルのついたセーラー服を見て、即却下した。
俺の分といって渡されたのは、黒耳付きのカチューシャ。
「コレ着ケテ、上着ヌゲバperfect!」って・・・・俺は変態かよ。
やたらとでかいキャリーバック持ってきてるなと思っていたのだが、中身は全てコスプレ道具だった。
子どものオモチャにしか見えないカラフルな小物を翠と妹が「可愛いねぇ。」と、楽しそうに眺めているが・・・シャインスターのパンツとかも見えてるんだがなぁ。
富士山柄のパンツとかどこに売ってるんだろう。
どう見ても翠しかいないだろうが。
実家に着くとシャインスターのテンションがだだ上がりで、「Japanese classical house! ニンジャ!ニンジャハ ドコニイマスカ!!」と、天袋や畳まで開けようとするので落ち着かせるのが大変だった。
うちには隠し扉も隠し階段もない。
掛け軸を何度めくっても回転扉どころか、御札もないぞ。
翠はひたすら恐縮していたが、お袋にあれこれと絡まれているうちに2人でキャッキャッと仲良く飯を作りはじめてた。和む。
うちの家族は父、母、俺、妹、弟の5人。
お袋が150㎝台でちんまりしているのだが、他の家族は揃って170㎝越えと、なかなかに威圧感があることは自覚している。
そんな中でお袋より少し身長の高い翠がお袋と仲良くおしゃべりしているのを見ていると、ついつい頬が緩む。
親父を見ると、俺と同じようにニヤニヤしていた。
「お前にしてはいい嫁見つけてきたじゃないか。」と珍しく褒められた。
院生の妹が夜遅くに帰ってきたのだが、妹を一目見たシャインスターが大騒ぎした。
「オーシャンブルー!?オーシャンブルー!!What? ダークネスファング is sister? Oh my God! I can't belive it! I met my fate.」
「なんなの?このチャラい外国人。」
妹の目がまるで虫を見るようだった。
気持ちは分かるが、せめて人として扱ってくれ。これでも人間としては良い分類だと思う。
翠に対しては一目見るなり「可愛い!お兄ちゃん!よくやったわ!きゃああ、すっごい好みなんですけど!一緒に服買いに行こう!?デートしよう!」と、はしゃぎまくっていた。
おい・・・妹よ・・・それは俺のだ。
弟に肩をぽんぽんと叩かれて慰められた。
休みの間、翠は俺の部屋に寝る予定だったが、お袋と妹に「女同士でいいじゃん。」と客間に布団を並べられ寝ることになった。
そして客間に寝る予定だったシャインスターが俺の部屋で寝ることになった。
・・・シャインスターの妹に関する質問がうざい。
全て「本人に聞いてくれ。」と答えていると、これは運命だの、日本に来て良かっただの、神様に感謝するだの熱に浮かされたようにぼやきはじめたので無視して寝た。
翌日、シャインスターが妹の後をついてまわるので、妹がキレた。
「うるさい、うざい、しつこい!私、コミケとか行かないから。それになんなのよ。オーシャンブルーって、変な名前で呼ばないでよねっ。」
妹にどれだけ冷たくされても、無視されても、罵倒されても懲りずについてまわるシャインスター。
さすがヒーロー、メンタル強い。
墓参りの日、シャインスターはコミケに行く為に、あちこちに羽根のついた真っ白なスーツを着て、お袋に化粧を施されていた。
「宝塚みたいねぇ。楽しいわぁ。」と、お袋もノリノリである。
俺と翠にも一緒にコミケに行こう!と誘っていたが、翠用の衣装だというやたらとフリルのついたセーラー服を見て、即却下した。
俺の分といって渡されたのは、黒耳付きのカチューシャ。
「コレ着ケテ、上着ヌゲバperfect!」って・・・・俺は変態かよ。
やたらとでかいキャリーバック持ってきてるなと思っていたのだが、中身は全てコスプレ道具だった。
子どものオモチャにしか見えないカラフルな小物を翠と妹が「可愛いねぇ。」と、楽しそうに眺めているが・・・シャインスターのパンツとかも見えてるんだがなぁ。
富士山柄のパンツとかどこに売ってるんだろう。
***********************************************
朝日に眩しい白のスーツを着て出かけていくシャインスター。
弟「すっげー。あの格好で電車乗っちゃうんだ。」
総一郎「さすがにマントとマスクは止めておいた。」
弟「すっげー。あの格好で電車乗っちゃうんだ。」
総一郎「さすがにマントとマスクは止めておいた。」
プロフィール
HN:
塩飴
性別:
非公開
自己紹介:
日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
最新記事
P R