11月。木枯らしはチャイムを鳴らす
「ようやく前田さん辞めたんだって?」
自分の机で書類を作っていると同僚が声をかけていた。
「あぁ、ようやく、だな。」
自主退職と勧告だけで済ましてあげるなんて優しいじゃん。と言われたが、実際にレイプ被害が起きたわけでないからあれが精一杯だと返す。
幸いと言うか、かろうじてと言うか、翠は今はところ無事だ。
今のところ、だ。
掲示板の書き込みだって消されたのは最近で、未だに翠の周辺には不審者がウロウロしている現状だ。
なるべく葵さんのところに泊まるようお願いしているが、葵さんのところにいつまでもお世話のになるわけにいかないし、隣人のシャインスターに出来る限り気をつけてやってくれとお願いしているが、毎日シャインスターがいるわけでもないので、心配は尽きることがない。
距離の離れてる現状にもどかしい思いをしていると、上司から東北方面の出張を打算された。
拠点を仙台にある支店にして、2週間程行ってほしいとの言葉に一も二もなく承諾する。
ほっと息を吐くと、上司に「佐藤さんのこと、十分気をつけてあげるんだよ。」と言われる。
どうやら気を使われていたらしい。
ありがたさに頭が下がる。
「翠、2週間よろしく頼む。」と声をかけると、「いえいえ、大したおかまいも出来ませんが、こちらこそよろしくお願いします。」と、翠は笑って部屋に招き入れてくれた。
翠との新婚にも似た生活はひたすら楽しかったが、朝夕の電車の中で、翠に手を伸ばそうとする輩が多いことに閉口するしかなかった。
いつもは女性専用車両に乗ってやり過ごしていたらしいのだが、翠の不安を考えると側にいれなかったことに後悔の念しか沸かなかった。
そんな中、同僚から電話が入る。
『前田さんに気をつけるんだよ。どうやら逆恨みしてるようだから。』同僚はあれからあの女のグチッターや、ブログを監視していたらしい。正直ありがたいが、そのスキルは一体どこで拾得しているのか不思議だ。俺が探した時は全然見つける事が出来なかったのに。
深夜ドンドンドンと、ドアを叩かれる。
「すいませーん。サトウミドリさんのお部屋ですかー。消防署の方から来た者です。夜分遅くにすいませーん。ドア開けてくださーい。」
ドアスコープを覗くが、姿を見られないように隠れているのか姿を確認する事ができなかった。
翠に携帯を持っていつでも通報出来るようにして隠れてろ、と指示をしてドアを開けると、数人の男達がニヤニヤしながら立っていた。
「なんの用ですか?」と尋ねると、
「あ?なんで男いんの?もしかして、もぅ始まってた?オレ達も混ぜてよ。」とニヤニヤしながらドアに手をかけようとする。
「なんの用かと聞いている。それにあんたら、消防員じゃないだろう。」なるべく平坦な声で話そうと思うが、いらだちで声が震える。
「はぁ?ミドリちゃんが寂しいから、お部屋でHしようって提案してきたんじゃねーか。自分が先に来たからって独り占めすんなよ。」と強引に部屋に入ろうとするので、その腕を捕まえて「どなたかとお間違えではありませんか?」と尋ねる。
「あぁ!?ミドリちゃんからメールくれたんだろ?その証拠にメールだって残ってんよ。」と、男は携帯の画面を開いて見せた。
【仙台在住のぉ、ミドリですぅ。
最近、寒くなってきたしぃ、人肌が恋しぃ。゜+(。ノдヽ。)゜+。
誰かミドリをあっためてほしぃな。即ヤリoK☆
連絡待ってまーす(*ゝω・*)ノ ×××@××××.××.××】
【ぉ返事ぁりがとぅ。
今日はミドリ、すっごいエッチな気分なんだ(*≧Δ≦)
だからたぁっくさんの人にアィして欲しぃな(〃・ω・〃)
お部屋は仙台市○○ ○○アパート3-3だょ。
合い言葉に消防の方から来たって言ってね☆
でないとドァ開けなぃよ(`Д´)
ぁと、ミドリとのメールは削除してね!!お・や・く・そ・く(ゝω∂)☆】
「な?俺らも招待客ってこと。どいてよ、色男のおにーさん。」
印籠のようにスマフォをかざす男。
「翠、警察に通報しろ。不審者が来たって。」
「はぁ!?なに言ってやがる。」男が慌てて逃げようとするのを捕まえる。
外にいた数人の男達も逃げようとするが、シャインスターに阻まれて逃げ出せないようだ。
「ダークネスファング!悪ノ組織成敗デスネ!?シャインスターの正義ノ鉄拳ヲ喰ラウトイイデス!」
シャインスターと二人で男達と格闘していると、階下から警察官が走ってきて取り押さえられた。
俺とシャインスターもろとも。
・・・つい、怒りに任せてぶん殴ってたからなぁ・・・・まぁ、反省していないが。
警察署でことのいきさつを説明すると、いくら数人いたから暴力振るったにしても、君のそのガタイで殴られたら君が加害者側になってしまうよと諭される。
好きな女一人守れない男よりはマシじゃないかと思うのだが、長居したくないので反省したフリをする。
別室にいた翠に会うと、泣きながら心配していた。
なんでドア開けちゃうのとか、俺がケガするんじゃないかと怖かったとか、まぁ、いろいろ。
最後の「ありがとう」という翠の声に翠が無事で良かったと神に感謝する。
俺が居るときで良かった。・・・・本当に。
後日、前田明美を強姦教唆で逮捕したと警察から連絡があった。
自分の机で書類を作っていると同僚が声をかけていた。
「あぁ、ようやく、だな。」
自主退職と勧告だけで済ましてあげるなんて優しいじゃん。と言われたが、実際にレイプ被害が起きたわけでないからあれが精一杯だと返す。
幸いと言うか、かろうじてと言うか、翠は今はところ無事だ。
今のところ、だ。
掲示板の書き込みだって消されたのは最近で、未だに翠の周辺には不審者がウロウロしている現状だ。
なるべく葵さんのところに泊まるようお願いしているが、葵さんのところにいつまでもお世話のになるわけにいかないし、隣人のシャインスターに出来る限り気をつけてやってくれとお願いしているが、毎日シャインスターがいるわけでもないので、心配は尽きることがない。
距離の離れてる現状にもどかしい思いをしていると、上司から東北方面の出張を打算された。
拠点を仙台にある支店にして、2週間程行ってほしいとの言葉に一も二もなく承諾する。
ほっと息を吐くと、上司に「佐藤さんのこと、十分気をつけてあげるんだよ。」と言われる。
どうやら気を使われていたらしい。
ありがたさに頭が下がる。
「翠、2週間よろしく頼む。」と声をかけると、「いえいえ、大したおかまいも出来ませんが、こちらこそよろしくお願いします。」と、翠は笑って部屋に招き入れてくれた。
翠との新婚にも似た生活はひたすら楽しかったが、朝夕の電車の中で、翠に手を伸ばそうとする輩が多いことに閉口するしかなかった。
いつもは女性専用車両に乗ってやり過ごしていたらしいのだが、翠の不安を考えると側にいれなかったことに後悔の念しか沸かなかった。
そんな中、同僚から電話が入る。
『前田さんに気をつけるんだよ。どうやら逆恨みしてるようだから。』同僚はあれからあの女のグチッターや、ブログを監視していたらしい。正直ありがたいが、そのスキルは一体どこで拾得しているのか不思議だ。俺が探した時は全然見つける事が出来なかったのに。
深夜ドンドンドンと、ドアを叩かれる。
「すいませーん。サトウミドリさんのお部屋ですかー。消防署の方から来た者です。夜分遅くにすいませーん。ドア開けてくださーい。」
ドアスコープを覗くが、姿を見られないように隠れているのか姿を確認する事ができなかった。
翠に携帯を持っていつでも通報出来るようにして隠れてろ、と指示をしてドアを開けると、数人の男達がニヤニヤしながら立っていた。
「なんの用ですか?」と尋ねると、
「あ?なんで男いんの?もしかして、もぅ始まってた?オレ達も混ぜてよ。」とニヤニヤしながらドアに手をかけようとする。
「なんの用かと聞いている。それにあんたら、消防員じゃないだろう。」なるべく平坦な声で話そうと思うが、いらだちで声が震える。
「はぁ?ミドリちゃんが寂しいから、お部屋でHしようって提案してきたんじゃねーか。自分が先に来たからって独り占めすんなよ。」と強引に部屋に入ろうとするので、その腕を捕まえて「どなたかとお間違えではありませんか?」と尋ねる。
「あぁ!?ミドリちゃんからメールくれたんだろ?その証拠にメールだって残ってんよ。」と、男は携帯の画面を開いて見せた。
【仙台在住のぉ、ミドリですぅ。
最近、寒くなってきたしぃ、人肌が恋しぃ。゜+(。ノдヽ。)゜+。
誰かミドリをあっためてほしぃな。即ヤリoK☆
連絡待ってまーす(*ゝω・*)ノ ×××@××××.××.××】
【ぉ返事ぁりがとぅ。
今日はミドリ、すっごいエッチな気分なんだ(*≧Δ≦)
だからたぁっくさんの人にアィして欲しぃな(〃・ω・〃)
お部屋は仙台市○○ ○○アパート3-3だょ。
合い言葉に消防の方から来たって言ってね☆
でないとドァ開けなぃよ(`Д´)
ぁと、ミドリとのメールは削除してね!!お・や・く・そ・く(ゝω∂)☆】
「な?俺らも招待客ってこと。どいてよ、色男のおにーさん。」
印籠のようにスマフォをかざす男。
「翠、警察に通報しろ。不審者が来たって。」
「はぁ!?なに言ってやがる。」男が慌てて逃げようとするのを捕まえる。
外にいた数人の男達も逃げようとするが、シャインスターに阻まれて逃げ出せないようだ。
「ダークネスファング!悪ノ組織成敗デスネ!?シャインスターの正義ノ鉄拳ヲ喰ラウトイイデス!」
シャインスターと二人で男達と格闘していると、階下から警察官が走ってきて取り押さえられた。
俺とシャインスターもろとも。
・・・つい、怒りに任せてぶん殴ってたからなぁ・・・・まぁ、反省していないが。
警察署でことのいきさつを説明すると、いくら数人いたから暴力振るったにしても、君のそのガタイで殴られたら君が加害者側になってしまうよと諭される。
好きな女一人守れない男よりはマシじゃないかと思うのだが、長居したくないので反省したフリをする。
別室にいた翠に会うと、泣きながら心配していた。
なんでドア開けちゃうのとか、俺がケガするんじゃないかと怖かったとか、まぁ、いろいろ。
最後の「ありがとう」という翠の声に翠が無事で良かったと神に感謝する。
俺が居るときで良かった。・・・・本当に。
後日、前田明美を強姦教唆で逮捕したと警察から連絡があった。
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自己紹介:
日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。
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著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
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