その男、バカ真面目
新幹線でやってきた総一郎さん。
「翠、会いたかった。」
そう言って駅構内で抱きしめてきた。
ちょっ、人っ、周りに人がいるからっっ、やーーめーーてーーっ。
あわてて引き離そうとしたけど、体格差がありすぎて微動だにしない・・・。
総一郎さん、背おっきいし、でかい。
でも骨格が綺麗だからスラっとしてる。
コンビニで買い物してる時から思ってたんだけど、どんな服着ても似合いそう。
いや、うん、スーツ姿しか見たことないんですけどね。
ほとんどのお客さんが無言の中、毎回「ありがとう」って言ってくれる総一郎さんの好感度はバツグンだった。
強面さんなのに「ありがとう」って言っちゃう!
そのギャップがいい。
・・・・すいません。現実逃避してました。
だって離してくれないんだもの。
「ん。満足。」
たっぷり5分ほど抱きしめられてたんじゃないかな・・ようやく離してくれた頃には私、口から魂出てた。
「どうして急に来たんです?なにか用事ですか?」疑問を口にのせる。
「翠のご両親に挨拶しに行こうと思って。」ニコリと総一郎さんが答えた。
「え。」
・・・私の両親は震災でいなくなってしまった。
大学進学の為に他県にいた私と、転勤でいなかった兄夫婦は無事だったけど、両親は飼い犬のポンタと黒猫のクロタと一緒に家ともろとも消えてしまった。
大学を休学してあちこち探しまくったけど、アルバムとかそういった物も見つけることもできなかった。
今、墓の中にあるのは震災の前に家族で写した家族写真を焼き増ししたもの。
たったそれだけが私の両親がいたという証拠になってしまった。
「翠を俺にくださいって、お願いしに来たんだ。」
にこにこと笑う総一郎さんを見てると・・・なんかもぅ、なんと言っていいのか分からなくなる。
・・・バカだなぁ、この人。バカがつくくらいに真面目だ。
「・・・ありがとう。きっと喜ぶ。」
泣き顔を見られたくなくて、ついつい下を見てしまう。
でも、車で行かないと行けない距離だよ?と言うとレンタカー借りようって。
えっと・・新幹線でウン万円レンタカー代で・・えっと・・・この人、いくら使う気!?
あわてて兄に電話して車を借りていいか尋ねる。
用事ないから別にいいよって返事だったので、兄のアパートまで一緒に行くことにした。
着いてから気が付いたんだけど、私、家族に恋人を紹介しなくちゃいけないんじゃない!?
え。ちょっと待って、いきなりハードル高い。
兄夫婦のアパートの前で固まってると、総一郎さんが「ここ?」とドアフォン押してしまった。
「はいはーい。翠ちゃん~?」と扉を開いたのは義姉さん。
総一郎さんはにこりと「こんにちは。はじめまして。翠さんとお付き合いさせていただいております。小林 総一郎と申します。」と挨拶をする。
ピシリと固まった義姉さんは、数秒後、「きゃぁぁ、葵君っ、葵君っ、翠ちゃんが彼氏連れてきたよっっ!」と部屋の中へ駆けて行った。
お兄ちゃんもビックリした顔で出てきて、立ち話もなんだしと中に入ることになった。
そこからは・・まぁ、総一郎さんの独壇場でして・・・。
この人って、営業でいい成績出してるっていうのは本当なんですね、と実感しました。
その間、私は現実逃避に凛ちゃんとお手てつないでをして遊んでました。
聞こえなーい。なーんも聞こえなーい。
なんか理解しちゃったら口から砂吐けそうなんだもの。なーんも聞こえなーい。
なんとか話が終わって車で墓へと向かう。
あ、運転は総一郎さんがやってくれました。
私はナビです。っていってもタブレット持ってただけだけど。
「すごいねぇ、いろんな機能があるんだねぇ」と感心してたら「好きなゲームでも入れたらいいよ。」と言われた。
「え、でも、備品でしょ?」と尋ねると「いや?俺が翠にあげたものだよ?」と言われて混乱する。
「こんな高いの貰えないよ!」と返そうとするが、「翠ごと貰うから問題ないよ。」言われてしまう。
ちょっ・・・なんなの・・・誰か助けて・・・父さん、母さん・・・私、私・・心臓がもたないよ。
ようやく墓に到着する。
途中で買ってきた花と線香を供えて、両親に手を合わせる。
お父さん、お母さん、私、この人と幸せになるからね。
だから、どうか安心して眠ってね。
「翠、会いたかった。」
そう言って駅構内で抱きしめてきた。
ちょっ、人っ、周りに人がいるからっっ、やーーめーーてーーっ。
あわてて引き離そうとしたけど、体格差がありすぎて微動だにしない・・・。
総一郎さん、背おっきいし、でかい。
でも骨格が綺麗だからスラっとしてる。
コンビニで買い物してる時から思ってたんだけど、どんな服着ても似合いそう。
いや、うん、スーツ姿しか見たことないんですけどね。
ほとんどのお客さんが無言の中、毎回「ありがとう」って言ってくれる総一郎さんの好感度はバツグンだった。
強面さんなのに「ありがとう」って言っちゃう!
そのギャップがいい。
・・・・すいません。現実逃避してました。
だって離してくれないんだもの。
「ん。満足。」
たっぷり5分ほど抱きしめられてたんじゃないかな・・ようやく離してくれた頃には私、口から魂出てた。
「どうして急に来たんです?なにか用事ですか?」疑問を口にのせる。
「翠のご両親に挨拶しに行こうと思って。」ニコリと総一郎さんが答えた。
「え。」
・・・私の両親は震災でいなくなってしまった。
大学進学の為に他県にいた私と、転勤でいなかった兄夫婦は無事だったけど、両親は飼い犬のポンタと黒猫のクロタと一緒に家ともろとも消えてしまった。
大学を休学してあちこち探しまくったけど、アルバムとかそういった物も見つけることもできなかった。
今、墓の中にあるのは震災の前に家族で写した家族写真を焼き増ししたもの。
たったそれだけが私の両親がいたという証拠になってしまった。
「翠を俺にくださいって、お願いしに来たんだ。」
にこにこと笑う総一郎さんを見てると・・・なんかもぅ、なんと言っていいのか分からなくなる。
・・・バカだなぁ、この人。バカがつくくらいに真面目だ。
「・・・ありがとう。きっと喜ぶ。」
泣き顔を見られたくなくて、ついつい下を見てしまう。
でも、車で行かないと行けない距離だよ?と言うとレンタカー借りようって。
えっと・・新幹線でウン万円レンタカー代で・・えっと・・・この人、いくら使う気!?
あわてて兄に電話して車を借りていいか尋ねる。
用事ないから別にいいよって返事だったので、兄のアパートまで一緒に行くことにした。
着いてから気が付いたんだけど、私、家族に恋人を紹介しなくちゃいけないんじゃない!?
え。ちょっと待って、いきなりハードル高い。
兄夫婦のアパートの前で固まってると、総一郎さんが「ここ?」とドアフォン押してしまった。
「はいはーい。翠ちゃん~?」と扉を開いたのは義姉さん。
総一郎さんはにこりと「こんにちは。はじめまして。翠さんとお付き合いさせていただいております。小林 総一郎と申します。」と挨拶をする。
ピシリと固まった義姉さんは、数秒後、「きゃぁぁ、葵君っ、葵君っ、翠ちゃんが彼氏連れてきたよっっ!」と部屋の中へ駆けて行った。
お兄ちゃんもビックリした顔で出てきて、立ち話もなんだしと中に入ることになった。
そこからは・・まぁ、総一郎さんの独壇場でして・・・。
この人って、営業でいい成績出してるっていうのは本当なんですね、と実感しました。
その間、私は現実逃避に凛ちゃんとお手てつないでをして遊んでました。
聞こえなーい。なーんも聞こえなーい。
なんか理解しちゃったら口から砂吐けそうなんだもの。なーんも聞こえなーい。
なんとか話が終わって車で墓へと向かう。
あ、運転は総一郎さんがやってくれました。
私はナビです。っていってもタブレット持ってただけだけど。
「すごいねぇ、いろんな機能があるんだねぇ」と感心してたら「好きなゲームでも入れたらいいよ。」と言われた。
「え、でも、備品でしょ?」と尋ねると「いや?俺が翠にあげたものだよ?」と言われて混乱する。
「こんな高いの貰えないよ!」と返そうとするが、「翠ごと貰うから問題ないよ。」言われてしまう。
ちょっ・・・なんなの・・・誰か助けて・・・父さん、母さん・・・私、私・・心臓がもたないよ。
ようやく墓に到着する。
途中で買ってきた花と線香を供えて、両親に手を合わせる。
お父さん、お母さん、私、この人と幸せになるからね。
だから、どうか安心して眠ってね。
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プロフィール
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塩飴
性別:
非公開
自己紹介:
日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
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