彼の後悔
「別れよう」
恋人の心が知りたくて、俺はメールを送った。
コンビニでバイトしてたあいつに一目惚れして、友人に背中押されて告白したのが1か月前。
あいつはビックリした顔してたが、笑顔で「自分でいいなら」と承諾してくれた。
仕事が忙しくてメールも電話もほとんど出来ない。
それにあいつもメールも電話も苦手なのかほとんどかかって来ない。
その代わり週末にあいつのアパートに行く。
にこにことご飯をよそってくれるあいつを見てるのが楽しくて、ついついいつも長居する。
・・・下心はあるけど、まだ付き合って1か月も経ってないのに手を出すなんてダメだよな。
あまり遅くまでいると自制が効かなくなるので、いつも後ろ髪ひかれる思いで帰ってること、あいつは知ってるのかな。
あいつの心を知りたいと悶々と考えてた。
会社でも有名な恋多き女が休憩室にいたので、どうしたらいいか尋ねてみると、「別れよう」メールで反応見ればいいじゃない、と言われたのでそうしてみた。
10分経っても返事がない。
20分経っても返事がない。
・・・・・・休憩時間が終わるまで待ってみたが、返事がこなかったので、きっと忙しくて見てないんだなと思い仕事に戻った。
アドバイス料として女にはコーヒーを渡したが、「そんなのより今度デートしてよぅ」と言われる。
語尾を伸ばした言い方にイラッっとしたが、会社で波風立たせるのはマズイと思い、笑いながら「いつかね」と言い机へと戻る。
その後、外回りに行ったり、発注ミスが発覚したりで、なんだかんだと忙しくなり会社から帰ってきたのは翌日の11時だった。
あまりにも疲れてたので、部屋につくなりベッドにダイブして睡眠を貪った。
・・・・・・メールの確認なんてすっかり忘れて。
ガバリと起きたのが日曜の昼。
Yシャツはよれよれの皺だらけ、髪もぼさぼさのまま、携帯に手を伸ばして時間を確認する。
-新着メールがあります-
あいつだ!
すっかり忘れてた、と慌てて画面を開く。
「了解」
・・・・たった2文字だけのメッセージに血の気が引く。
慌てて電話をかけるが、「電源が入っていないか、電波が届かないところにいます」という硬質なメッセージが聞こえてくるばかりだった。
何度かけ直しても、聞こえてくるのは同じメッセージ。
慌てて部屋を出ようとして財布に手を伸ばすが、鏡でよれよれの姿が見てしまい、これじゃダメだと思い返し風呂に入って身支度をする。
ヤバい。怒ってるのかな。
どうしたら機嫌直してくれるかな、と、動揺しながらも、心の底に喜びがあることを自覚してしまう。
いつもニコニコして怒ってる姿が想像できないあいつが、俺のこと怒ってる。
現状は最悪なのに、そう思ってしまいニヤつく顔が止められない。
どうしよう、なにかあいつの好きなの持って行って詫びればいいのかな。
ケーキではレアチーズが好きだって言ってた、と、あいつの好きなのを思い出しながら服を着替え、大急ぎで部屋を出た。
ケーキの包みを持った俺を出迎えてくれたのは、空っぽの部屋。
あいつがいない。
慌ててあいつに電話をするが何度かけてもすぐに切られてしまう。
数十回目かけ直した所でまたあの「電源が入っていないか、電波が届かないところにいます」というメッセージが繰り返されるばかりだった。
苛立ちのままに携帯を叩きつけたくなる衝動を必死に抑える。
ダメだ、今この携帯壊したら、あいつとの接点がなくなる、その一心で。
あいつの部屋の両サイドのドアを叩き、あいつのことを尋ねると、今朝、引っ越し業者が来て出て行ったらしい。
あいつの行った先を訪ねたが、分からないとしか言われなかった。
大家の電話番号を教えてもらい、実家の住所と電話番号を聞き出そうとしたが個人情報がどうのと教えてくれなかった。
あまりにも俺が鬼気迫る様子だったのか、隣の部屋の住人が「あんたなに?ストーカーなの?」と聞いてきた。
冗談じゃない。
「恋人だよっ」と苛立ちのままに返事すると「こわっ」と一言言われて、扉を閉められてしまった。
そうだ、コンビニ!と思い、慌てて駆け出した。
あいつのことを店員に尋ねると、学校を卒業するので実家に帰るとバイトを辞めたらしい。
「実家は!?」と尋ねると、「遠い地方だと言ってた気がする」という返事しかなかった。
住所などを聞いたが、「店長いないし分かんない」、と言われた。
八方塞がりのまま自分の部屋に帰る。
ハハ・・ハハハ・・俺、捨てられた?
引っ越すとか聞いてない。
実家もどこだか聞いてない。
何一つ・・知らないんだな。
ぽた、ぽた、と涙が床に垂れた。
何度も電話してもあいつは電話に出ない。
後日、またコンビニに行き、実家の住所と電話を教えてくれと店長を捕まえて頼み込んだ。
俺の必死な様子に、「本当はダメなんだけど履歴書確認するくらいなら」と言って確認してくれた。
・・・書かれていた住所はあいつが住んでたアパート。電話番号も携帯だけだった。
電話番号とメールアドレスしか連絡手段が残されていない。
何度電話しても、メール送っても、あいつは返事をくれない。
そのうち着信拒否にされたのか、電話もメールも送れなくなった。
・・・俺、バカだな。
なんであんなメール送ったんだろう。
道行く人の中に、あいつを探してしまう俺がいる。
よく似た人を見かけると、つい顔を確認してしまう。
メールが来るたびに、あいつからじゃないかと期待してしまう俺がいる。
・・・これって、ストーカーなのかな。
ひどく執着してることは自覚してる。
最近、元気がない俺に気をつかって同僚や友人達が酒に誘ってくれることが多くなった。
新しい恋でもしたら、と合コンに誘われることも多くなった。
・・・でもさ、胸にポッカリ穴が開いたような気がするんだ。
なんであんなメール・・・送っちゃったんだろうな。
恋人の心が知りたくて、俺はメールを送った。
コンビニでバイトしてたあいつに一目惚れして、友人に背中押されて告白したのが1か月前。
あいつはビックリした顔してたが、笑顔で「自分でいいなら」と承諾してくれた。
仕事が忙しくてメールも電話もほとんど出来ない。
それにあいつもメールも電話も苦手なのかほとんどかかって来ない。
その代わり週末にあいつのアパートに行く。
にこにことご飯をよそってくれるあいつを見てるのが楽しくて、ついついいつも長居する。
・・・下心はあるけど、まだ付き合って1か月も経ってないのに手を出すなんてダメだよな。
あまり遅くまでいると自制が効かなくなるので、いつも後ろ髪ひかれる思いで帰ってること、あいつは知ってるのかな。
あいつの心を知りたいと悶々と考えてた。
会社でも有名な恋多き女が休憩室にいたので、どうしたらいいか尋ねてみると、「別れよう」メールで反応見ればいいじゃない、と言われたのでそうしてみた。
10分経っても返事がない。
20分経っても返事がない。
・・・・・・休憩時間が終わるまで待ってみたが、返事がこなかったので、きっと忙しくて見てないんだなと思い仕事に戻った。
アドバイス料として女にはコーヒーを渡したが、「そんなのより今度デートしてよぅ」と言われる。
語尾を伸ばした言い方にイラッっとしたが、会社で波風立たせるのはマズイと思い、笑いながら「いつかね」と言い机へと戻る。
その後、外回りに行ったり、発注ミスが発覚したりで、なんだかんだと忙しくなり会社から帰ってきたのは翌日の11時だった。
あまりにも疲れてたので、部屋につくなりベッドにダイブして睡眠を貪った。
・・・・・・メールの確認なんてすっかり忘れて。
ガバリと起きたのが日曜の昼。
Yシャツはよれよれの皺だらけ、髪もぼさぼさのまま、携帯に手を伸ばして時間を確認する。
-新着メールがあります-
あいつだ!
すっかり忘れてた、と慌てて画面を開く。
「了解」
・・・・たった2文字だけのメッセージに血の気が引く。
慌てて電話をかけるが、「電源が入っていないか、電波が届かないところにいます」という硬質なメッセージが聞こえてくるばかりだった。
何度かけ直しても、聞こえてくるのは同じメッセージ。
慌てて部屋を出ようとして財布に手を伸ばすが、鏡でよれよれの姿が見てしまい、これじゃダメだと思い返し風呂に入って身支度をする。
ヤバい。怒ってるのかな。
どうしたら機嫌直してくれるかな、と、動揺しながらも、心の底に喜びがあることを自覚してしまう。
いつもニコニコして怒ってる姿が想像できないあいつが、俺のこと怒ってる。
現状は最悪なのに、そう思ってしまいニヤつく顔が止められない。
どうしよう、なにかあいつの好きなの持って行って詫びればいいのかな。
ケーキではレアチーズが好きだって言ってた、と、あいつの好きなのを思い出しながら服を着替え、大急ぎで部屋を出た。
ケーキの包みを持った俺を出迎えてくれたのは、空っぽの部屋。
あいつがいない。
慌ててあいつに電話をするが何度かけてもすぐに切られてしまう。
数十回目かけ直した所でまたあの「電源が入っていないか、電波が届かないところにいます」というメッセージが繰り返されるばかりだった。
苛立ちのままに携帯を叩きつけたくなる衝動を必死に抑える。
ダメだ、今この携帯壊したら、あいつとの接点がなくなる、その一心で。
あいつの部屋の両サイドのドアを叩き、あいつのことを尋ねると、今朝、引っ越し業者が来て出て行ったらしい。
あいつの行った先を訪ねたが、分からないとしか言われなかった。
大家の電話番号を教えてもらい、実家の住所と電話番号を聞き出そうとしたが個人情報がどうのと教えてくれなかった。
あまりにも俺が鬼気迫る様子だったのか、隣の部屋の住人が「あんたなに?ストーカーなの?」と聞いてきた。
冗談じゃない。
「恋人だよっ」と苛立ちのままに返事すると「こわっ」と一言言われて、扉を閉められてしまった。
そうだ、コンビニ!と思い、慌てて駆け出した。
あいつのことを店員に尋ねると、学校を卒業するので実家に帰るとバイトを辞めたらしい。
「実家は!?」と尋ねると、「遠い地方だと言ってた気がする」という返事しかなかった。
住所などを聞いたが、「店長いないし分かんない」、と言われた。
八方塞がりのまま自分の部屋に帰る。
ハハ・・ハハハ・・俺、捨てられた?
引っ越すとか聞いてない。
実家もどこだか聞いてない。
何一つ・・知らないんだな。
ぽた、ぽた、と涙が床に垂れた。
何度も電話してもあいつは電話に出ない。
後日、またコンビニに行き、実家の住所と電話を教えてくれと店長を捕まえて頼み込んだ。
俺の必死な様子に、「本当はダメなんだけど履歴書確認するくらいなら」と言って確認してくれた。
・・・書かれていた住所はあいつが住んでたアパート。電話番号も携帯だけだった。
電話番号とメールアドレスしか連絡手段が残されていない。
何度電話しても、メール送っても、あいつは返事をくれない。
そのうち着信拒否にされたのか、電話もメールも送れなくなった。
・・・俺、バカだな。
なんであんなメール送ったんだろう。
道行く人の中に、あいつを探してしまう俺がいる。
よく似た人を見かけると、つい顔を確認してしまう。
メールが来るたびに、あいつからじゃないかと期待してしまう俺がいる。
・・・これって、ストーカーなのかな。
ひどく執着してることは自覚してる。
最近、元気がない俺に気をつかって同僚や友人達が酒に誘ってくれることが多くなった。
新しい恋でもしたら、と合コンに誘われることも多くなった。
・・・でもさ、胸にポッカリ穴が開いたような気がするんだ。
なんであんなメール・・・送っちゃったんだろうな。
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プロフィール
HN:
塩飴
性別:
非公開
自己紹介:
日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
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