塩飴の倉庫 彼と彼女の話4 忍者ブログ
小説、イラスト置き場
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彼女の引っ越しやその他の事情

私の代りに泣いてよって言ったけどさ・・・ぽつぽつと降り始めた雨はすぐに豪雨になって、アパートに帰り着く頃には、ぐっしょりの濡れ鼠になった。
これがゲリラ豪雨ってやつか・・・都会って怖い。
肌に張り付いて脱ぎにくい服をどうにか剥いで、シャワーを浴びてると悲しくなって泣いた。

気が済むまでわんわん泣いたらなんかスッキリした。
長く風呂に浸かってたせいで指はしわしわ、目も腫れぼったいけど。
冷蔵庫から牛乳をラッパ飲みして一息つく。
「よっし、引っ越し頑張るぞ!」
押入れの奥にたたんであった段ボールを組みたてる。
大学入学の時に引っ越してきた時のだから、うっすらホコリがついてる段ボールだけど使えるからいいんだ。
服に、本に、食器道具、食品・・は限りなく減らしてたから大丈夫。
TVは引っ越し屋業者が梱包材持ってくるって言ってたからいいとして、冷蔵庫と洗濯機は備え付けのものだから問題ない。
布団は朝、圧縮袋に入れるとして・・ついでにカーテンも入れて圧縮しよう。
粗方の物を段ボールに入れるとあまりにもガランとした部屋に呆然となる。
大学の思い出の品ってものもほとんどないし、元々物欲もすくないから物もあまりない。
写真も・・・あまり好きじゃなくて撮ってない。

・・・一枚くらい思い出に撮っておくべきだったな・・・・。
彼の顔を思い出して涙腺が緩みそうになる。
だけど携帯は鳴らないし・・・お別れって一瞬なんだな、と思ってしまうと涙がこぼれた。




引っ越し先のアパートに着いたのが日曜の昼前。
手伝いをお願いしてた兄と義姉も到着してして、ほうきとかかけてくれてた。
3歳になる姪の凛ちゃんも来てて、おもちゃのピアノで楽しそうに遊んでるのを見ると和む。
あぁ、可愛いっ。可愛いな。
ぷくぷくのほっぺも、輪ゴムのついたような手足も可愛い。

拭き掃除とかしてると引っ越し業者さんが到着して、凛ちゃんを安全地帯に隔離しての作業(台所の隅に段ボールで区切ってのだけど)。
皆で荷物を運んで配置どうしようかと話ししてると、突然凛ちゃんがキャーキャー大きな声あげた。
何事!?と慌てて駆け寄ると凛ちゃんが私の携帯をジュースの中に入れて洗ってた。
画面とかボタンがチッカチッカいろんな色に点灯してて、それが凛ちゃんすごい楽しかったみたい・・・・私のっ、私の携帯ぃぃーーーっ。
周りを見たら義姉さんと私のバックの中身が散乱してた。
「きゃぁぁっ、凛っ、手ぇ、手ぇ離してぇ。お願いっ。」
義姉さんが慌てて取り上げようとするが、凛ちゃんが離してくれなくて、メッって言って取り上げたら、ギャーーッと泣き出してしまった。
「ごめんねぇっ、ごめんねぇっ、あぁ、どうしよう。これって直るのかしらっ。」おろおろしながら泣きわめく凛ちゃんを慰める義姉さん。
兄がべたべたになった携帯を水洗いするがチカチカが止まらない。
「・・・・これ、データ死んだかもしれん。バックアップとか取ってるか?」
・・・お兄ちゃん、バックアップってどうやるの・・・。

結局、私の携帯は死亡しました。

兄と義姉が謝ってきて、お金出すから新しい携帯買おうって事になったんだけど、元の番号継続させると結構高かった・・・新しい番号だと0円です~(ニコリ)と言う販売員さんの言葉に新しい番号にすることに決める。

彼との接点、なんも無くなっちゃった。
縁がなかったんだなぁ・・・。
そう思って心機一転、頑張ろうって決めた。



5月。

本社に新人研修に行くと彼がいました。
ビックリして顔を見つめてると、ふらふらと近寄ってきて・・こ、告白?された。
あまりのことに声も出せずにいると、いつの間にか挨拶が終わっていて、連れて行かれた総務(研修先)で質問責めにあいました(涙)
なんなの?あのミドリちゃんって・・・なんで皆、私の名前知ってるの?
ようやくお昼になったと思ったら、個室に連れていかれて弁当を2つ渡される。
そしたら彼が同僚に背中押されて部屋に入ってきた。
彼を見てると、ムカっとか、イラっとか、頬とかこけちゃってるけどカッコイイとか、なんでこの会社にいるのよ、とかいろいろと感情が沸いてきて、ついついキツメに質問をしてしまう。
そ、そしたら・・・「結婚しよう。翠。」って・・・・。
翠って、翠って呼んだ!
ごめん、その後、感情がぐるぐるしてて、なに口走ったかあまり覚えてない。

新人歓迎会で隣の席に座らされて、総一郎さんの事たくさん教えてもらった。
・・・・・本当、バカなんじゃないかな。
なんなんだろう・・・ご飯食べないって・・・そんなに・・そんなにわた、私のこと好きでいてくれたの?
あのメールのことも教えてもらったけど、本当バカだと思う。
総一郎さんも。私も。

勇気を出して新しいアドレス渡した。
なんかすごい勢いで赤外線交信してアドレス登録された。
新しいアパートとか実家の住所とか、家族構成まで尋問のように聞かれてんだけど・・つき合うってこういうことなのかな?
ようやく宿泊所に戻ると泥のように眠った。
なんか1日、すごい日だった。
研修まだまだあるのに・・私、体保つかなぁ。

翌日の昼。
総一郎さんの成長記録?を聞かされたんだけど、えーっと、つき合うってこういうことなのかな?
いままで見たことないくらいよく喋る総一郎さんの声を個人的情報満載な資料を手にボンヤリ聞くしかなくて、後で総務の先輩に聞こうと思う。
希望と要望があればこれに記入してくれって、紙渡されたんだけど、なに書けばいいんだろう。


研修終了日に総一郎さんにタブレットを渡される。
本当は指輪を先にあげたかったらしいのだが、隣にいた同僚に止められたらしい。
「サイズも好みも分からないのに買うな。一緒にいって選んで買え!」とのことです。
グッジョブですっ!同僚さん。
えっ、ていうか買うこと決定なの?
私、聞いてないんですけど、っていうか、このタブレットも一体なんなの?
そう思ってタブレットをしげしげ見ていると使い方の説明をされる。
無料で顔見ながら電話ができる・・・ふむふむ。
これがSNS?
チャット?
よく分からないけど出来るらしい。・・・ふむ。
あ、メールアドレスは好きに決めればいいの?
え~っと、え~っと・・・【rinchan.love@docoda.ne.jp】これでよし、と。
グフッ、とか、ゴフッとか吹き出す声が聞こえて顔をあげると、ものすごい顔した総一郎さんがいた。
「リンちゃんって誰だ。」
「えっ、姪っこよ?3歳でかわいいのよ。そりゃもぅ天使なんだから!!」
凛ちゃんの可愛さを力説していると、隣の同僚さんに「そ。それも可愛いけど、そのアドレス後で俺らも交換したいから、で、できればもっとおとなしめなのにしない?」と提案された。
私の名前でいいのかな・・・。
登録すると、「んじゃ、これ俺の~。」とか、「これ私のアドレスね~。」と次々に登録された。
・・・このタブレット支給品・・・なのかな?


新人研修が終わった次の週末、総一郎さんからチャット?が飛んできた。
「今、新宿駅」
「上野通過」
「大宮通過」
「小山通過」
  ・
  ・
  ・
「仙台着」

・・・・お、お前はメリーさんかっっ。
怖くて思わず迎えに来ちゃったけどさっ、なんで来ちゃうの?
約束してないよね?
え・・・これから毎週来る・・・?
え・・・・・っ!?
え!?


*************************************************************
総務のベテラン女史「ねぇ、あのタブレット、変なアプリとか入れてないよね?」
同僚「GPSとか?メール転送アプリとか?盗撮アプリとか?それは絶対入れないよう見張ってたから大丈夫。」
総務のベテラン女史「それなら安心だけど。いつの間にか入れてそうで怖いわ。佐藤さん機械に弱そうだし。入れられても気づかないわよ。」
同僚「・・・・今後、変な行動しないか注意観察しておきます。
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