塩飴の倉庫 彼と彼女の話15 忍者ブログ
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12月。初雪の舞う中で

前田明美の判決は初犯の為、実刑はなかったものの接近禁止令と慰謝料が命じられる。
実行犯である男達は騙されたということで注意勧告のみであった。
前田明美は途中、激高して「私だけが悪くないっ、ネットの皆だっていいって言ってた!あいつらにも責任あんだろ!それにミドリムシだって、こいつが金持ち だから玉の輿狙ってんだろう!?清純面してんじゃねぇよ。」と弁護士が制止するのも聞かず、暴言を吐いたので途中退席を言い渡された。

面と向かって暴言を吐かれた翠は、あまりのショックで倒れそうになるが気丈にも、最後まで判決が下るのを見届けた。


裁判が終わったのは夕刻に近い時間で、裁判所を出る頃には街路樹に巻かれたネオンがチカチカと点灯し始めていた。
翠と手を繋ぎながら無言で公園を歩く。

「すまん。翠。言ってなかったことがある。
俺・・・高遠製鋼継ぐんだ。たぶん、これからもこんなのが出てくるかもしれない。それでも俺と一緒に人生を歩いてくれないか?」
「でも・・・総一郎さん。私、なにも持ってない、平凡な女なんです。
平凡より・・・もっと悪いかな。お金もないし、なにも出来ないし、・・・親もいない。そんなのが総一郎さんのお嫁さんには・・・ふさわしくないよ。」
「・・・それでも俺は翠が欲しいよ。翠と一緒に桜見て、翠と一緒にいたい。
なぁ・・・頼むからうんって言ってくれ。翠のこと絶対守るから。」
翠の冷たい手を握りしめながら言う。
しばらく沈黙が続いた後、翠はこくりと頷いて「・・・私でいいのなら。」と言った。


空から白い雪がハラハラと舞い落ちる。
初雪を地面に着く前に掴むことができたら願いが叶うって教えてくれたのは誰だったかな、とふと思う。
ふわりと手の平に落ちてきた雪に、俺の願いは叶ったよ、とつぶやいた。
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日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。

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