とある先輩のお昼時間
「なぁ、なんで最近ディートハルト殿下はノアにくっついて仕事してんの?」
隊員の食堂で昼飯を摂りながら、隣にいた同僚に聞いてみた。
「あ?」魚のフライを口に運びつつ、同僚のサムが返事をする。
「いや、最近ずっとノアにくっついてディートハルト殿下仕事してんじゃん?皇太子様大丈夫なのかな、と思ってさ。」
うむ。今日の飯も美味い。パンが固いけど、噛みごたえがあると思えば食べられる。
「あ~・・だよなぁ。そのうち倒れるんじゃないかな?忙しすぎて普通に仕事してるヤツもぶっ倒れてるしな。」
最近あったラノアの媚薬関係者一斉逮捕後、王宮は上へ下への大騒ぎとなった。
たくさんの貴族が逮捕された為、どこもかしこも人が足りず、まさしく猫の手も借りたい状況だ。
その為、退役した軍人や文官も呼びだされて、なんとか切り盛りしているという塩梅である。
ノアも呼び出されたらしく、今までは大きな軍事演習や式典準備の際にしか参加してなかったのが、最近は連日王宮に通い詰めているらしい。
「そういやぁ、ノア。宰相の息子らしいぞ?」
サムが湯がかれた野菜にドレッシングをかけながら言う。
「ほぁ!? なにそれ、オレ聞いてないんですけど!?」
あまりにも衝撃的な言葉に、思わず食べてた鶏肉のソテーが口から落ちた。
「きったねぇなカール。遅刻するお前が悪いんだろ? しかもだな、あのシエラ嬢と婚約したってよ。ノアも報われるってもんだよな。」
うんうんと頷きながら野菜を口に運ぶ。
は!?とか、うぇ?とか言ってるオレに、サムが笑いながら教えてくれた。
部隊の朝礼でノアはカーライル宰相の息子であること、シエラ嬢との婚姻によりラドシール公爵家に一員になる予定とのこと。
公への発表として、ディートハルト殿下は事件の際、囮として他の公爵家の嫡男と共に参加されており、事件が終わったので今後は国の仕事を覚える為、軍部、執行部の仕事に携わるとのこと。
で、その仕事を教える担当がノア、ということらしい。
ディートハルト殿下が、是非に目標とさせてほしいとノアに頭を下げたそうだ。
・・・ノアと宰相が親子・・・・親子・・・え~・・顔・・・そういえば似てるかも、ニパっと笑うノアの顔を思い出しながら宰相の顔を思い出す。
いつもニコニコと笑う宰相の顔が脳裏に思い出される。
・・・親子だ・・・間違いなく親子だ・・・ものすごく納得した。うん。
笑顔で猛烈な勢いで書類をさばく宰相は、裏で微笑みキラーマシンと呼ばれている。
ノアもいつもニコニコしてる。というか楽しそうだしな。
それに、ものすごく頭良かったわ。
部隊の収支計算とかものの10分で終わらして、書類作ってたし。
書類もめちゃくちゃキッチリキレイだったんですけど・・・手馴れてると思ってたけど、執行部にも籍おいてるんだっけか。ノア。
・・・・頭の良さって遺伝するんだな。
軍部の隊員であるオレやサムに交じって泥まみれになって野山を走り回ってたから、なんだか信じられないけどさ。
それにノアがやたらとベアーとか倒したがるから、それ止めるのにいつも必死だったし。
・・・なにが熊鍋にしましょう!だよ、無駄にキラキラした笑顔しやがって。お前は大丈夫かもしれんが、こっちは死んでまうわ。
野営中に襲いかかってきた白狼を次々と一突きで殺っておいて、コレ、シエラ様にお土産にしたら喜ばれますかね?って、嬉々として毛皮剥ごうとしたのを止めたオレは褒められていいと思う。・・・まぁ、毛皮は加工されコートになって、どこぞの貴族に献上されたと聞いたけどさ。
ノアの場合、加工しないで剥いだままのを持ってく。賭けてもいい。
毎回毎回、やたらと殺った動物を土産にしようとするノアを止めて、代わりに女の子が喜びそうな土産を教えるのが、オレの役目だった。
いやだって、ベアーの頭貰って喜ぶと思うか・・深窓の令嬢が。無理無理。絶対嫌われるって。
姉や妹がいるせいで、女の子へのお土産には慣れてるオレに感謝しろノア!
「あれ?なんでそれでディートハルト殿下はノアにくっついてんのさ。ノアとシエラ様って婚約したんだろ?元婚約者と現婚約者って普通、仲悪くなるもんじゃねぇの?」
いろいろと思い出しながら、それでもふと思いついた疑問を口にする。
「そらノアが執行部でも軍部でもエースだからだろ。それにほれ、見てみろよ。」
見ればディートハルト殿下が、書類に筆を走らせながら食事をしつつ、合間にノアに質問をしている。
「ノア兄、この時期の降雨量ってなにか役にたつのか?」
ノアも机を反対側の席に座り、食事をしながら殿下の質問に答えている。
「いい質問ですね。この時期の降雨量が麦の発育に重要なんですよ。それを参考に今年の出来高を試算して配給を決めるんです。」ニコニコと笑顔で答えるノア。
・・・・ノア兄?
「なんか懐かれたらしいぞ? ラドシール公も宰相も容赦なく仕事を渡すが、誰も教えてくれんかったらしいからな。
まぁ、いくら粗相したからといって皇太子様や公爵家嫡男にでかい口でモノ教えれる人間っていないだろ。
それをノアが見かねてな~・・最愛のお嬢様を殺されかけたってのに、ほんとお人よしなのな。アイツ。
それにノアは執行部の書類だろうがなんだろうが、全部こなせる上に腕も立つからな。護衛としても丁度いいってことらしいぞ。」
へ~である。へ~・・・。
・・皇太子様はシエラ嬢に愛ってなかったんかなぁ。
政略結婚は愛が無くても金があればするもんだとは、よく耳にするけどさ。
そういえばノアが皇太子様とシエラ嬢はほとんど話をしないって言ってたし。
ふ~ん・・へ~・・・と言いつつ、なんとか昼飯を腹に収めて、仕事へと戻ろうと食器を入れたトレーを手に席を立つ。
「あっ!カール先輩!」
ノアがオレを見つけて、よく通る声で呼びかけてきた。
「よ、よぉ、元気してっか?」
やめてっ、呼ばないでよっ、前に皇太子いるんだからっ。下手に目をつけられたら恨むぞノア! と内心、冷汗をかきながら返事をする。
そんなオレに気が付くこともなく、近寄ってきたノアは言葉を続ける。
「今度また、いいお店紹介してくださいね!? よろしくお願いします!」
「あ、あぁ。家に帰ったら、妹にでも聞いとくわ。」
だ~ら、だ~らと汗が背中を伝う・・待って?シエラ嬢と結婚したらノアって、公爵様なんじゃないの?ヤバイヤバイ、んな高い身分の人になんて口きいてん の?オレ。下手したら不敬罪よ?ふぉぉぉ~~っとめちゃめちゃ混乱してると、ノアと皇太子はなにやら話をしてたようで、ディートハルト殿下がオレに声をか けてきた。
「・・・カール先輩、是非に俺にもいい店の紹介よろしくお願いします。」
なんだかやたらと気迫に満ちたディートハルト殿下に、ガシッと握手された。
「ふぉっ!?」
やべぇ・・・変な声出た。
片手に持ってたトレーを落とさなかったオレって超えらい。
「こ、こちらこそよろしくお願いします?」
・・・真っ白になったオレ。泣いていいか。
その後、いい店ってなんだ、と皆に聞かれまくりました。
オレ、泣いてもいいよね?
ところでディートハルト殿下・・ノアを目標にするのはいいけど、無理しなきゃいいけどな。
ノアの仕事量、軽く人の3倍だぜ?
軍部でもノアに武力的に勝てるのってそうそういないし・・ベアーに笑いながら立ち向かってくヤツなんて、ノア以外にオレ見たことねぇよ。
昔はラドシール家の稚児って馬鹿にする奴らもいたけど、そういやぁ、あいつら逮捕されたんだっけか。
良かったなノア。努力した分だけ報われるってマジなんだな。
くそ~・・オレも可愛い嫁さん欲しいな~。
隊員の食堂で昼飯を摂りながら、隣にいた同僚に聞いてみた。
「あ?」魚のフライを口に運びつつ、同僚のサムが返事をする。
「いや、最近ずっとノアにくっついてディートハルト殿下仕事してんじゃん?皇太子様大丈夫なのかな、と思ってさ。」
うむ。今日の飯も美味い。パンが固いけど、噛みごたえがあると思えば食べられる。
「あ~・・だよなぁ。そのうち倒れるんじゃないかな?忙しすぎて普通に仕事してるヤツもぶっ倒れてるしな。」
最近あったラノアの媚薬関係者一斉逮捕後、王宮は上へ下への大騒ぎとなった。
たくさんの貴族が逮捕された為、どこもかしこも人が足りず、まさしく猫の手も借りたい状況だ。
その為、退役した軍人や文官も呼びだされて、なんとか切り盛りしているという塩梅である。
ノアも呼び出されたらしく、今までは大きな軍事演習や式典準備の際にしか参加してなかったのが、最近は連日王宮に通い詰めているらしい。
「そういやぁ、ノア。宰相の息子らしいぞ?」
サムが湯がかれた野菜にドレッシングをかけながら言う。
「ほぁ!? なにそれ、オレ聞いてないんですけど!?」
あまりにも衝撃的な言葉に、思わず食べてた鶏肉のソテーが口から落ちた。
「きったねぇなカール。遅刻するお前が悪いんだろ? しかもだな、あのシエラ嬢と婚約したってよ。ノアも報われるってもんだよな。」
うんうんと頷きながら野菜を口に運ぶ。
は!?とか、うぇ?とか言ってるオレに、サムが笑いながら教えてくれた。
部隊の朝礼でノアはカーライル宰相の息子であること、シエラ嬢との婚姻によりラドシール公爵家に一員になる予定とのこと。
公への発表として、ディートハルト殿下は事件の際、囮として他の公爵家の嫡男と共に参加されており、事件が終わったので今後は国の仕事を覚える為、軍部、執行部の仕事に携わるとのこと。
で、その仕事を教える担当がノア、ということらしい。
ディートハルト殿下が、是非に目標とさせてほしいとノアに頭を下げたそうだ。
・・・ノアと宰相が親子・・・・親子・・・え~・・顔・・・そういえば似てるかも、ニパっと笑うノアの顔を思い出しながら宰相の顔を思い出す。
いつもニコニコと笑う宰相の顔が脳裏に思い出される。
・・・親子だ・・・間違いなく親子だ・・・ものすごく納得した。うん。
笑顔で猛烈な勢いで書類をさばく宰相は、裏で微笑みキラーマシンと呼ばれている。
ノアもいつもニコニコしてる。というか楽しそうだしな。
それに、ものすごく頭良かったわ。
部隊の収支計算とかものの10分で終わらして、書類作ってたし。
書類もめちゃくちゃキッチリキレイだったんですけど・・・手馴れてると思ってたけど、執行部にも籍おいてるんだっけか。ノア。
・・・・頭の良さって遺伝するんだな。
軍部の隊員であるオレやサムに交じって泥まみれになって野山を走り回ってたから、なんだか信じられないけどさ。
それにノアがやたらとベアーとか倒したがるから、それ止めるのにいつも必死だったし。
・・・なにが熊鍋にしましょう!だよ、無駄にキラキラした笑顔しやがって。お前は大丈夫かもしれんが、こっちは死んでまうわ。
野営中に襲いかかってきた白狼を次々と一突きで殺っておいて、コレ、シエラ様にお土産にしたら喜ばれますかね?って、嬉々として毛皮剥ごうとしたのを止めたオレは褒められていいと思う。・・・まぁ、毛皮は加工されコートになって、どこぞの貴族に献上されたと聞いたけどさ。
ノアの場合、加工しないで剥いだままのを持ってく。賭けてもいい。
毎回毎回、やたらと殺った動物を土産にしようとするノアを止めて、代わりに女の子が喜びそうな土産を教えるのが、オレの役目だった。
いやだって、ベアーの頭貰って喜ぶと思うか・・深窓の令嬢が。無理無理。絶対嫌われるって。
姉や妹がいるせいで、女の子へのお土産には慣れてるオレに感謝しろノア!
「あれ?なんでそれでディートハルト殿下はノアにくっついてんのさ。ノアとシエラ様って婚約したんだろ?元婚約者と現婚約者って普通、仲悪くなるもんじゃねぇの?」
いろいろと思い出しながら、それでもふと思いついた疑問を口にする。
「そらノアが執行部でも軍部でもエースだからだろ。それにほれ、見てみろよ。」
見ればディートハルト殿下が、書類に筆を走らせながら食事をしつつ、合間にノアに質問をしている。
「ノア兄、この時期の降雨量ってなにか役にたつのか?」
ノアも机を反対側の席に座り、食事をしながら殿下の質問に答えている。
「いい質問ですね。この時期の降雨量が麦の発育に重要なんですよ。それを参考に今年の出来高を試算して配給を決めるんです。」ニコニコと笑顔で答えるノア。
・・・・ノア兄?
「なんか懐かれたらしいぞ? ラドシール公も宰相も容赦なく仕事を渡すが、誰も教えてくれんかったらしいからな。
まぁ、いくら粗相したからといって皇太子様や公爵家嫡男にでかい口でモノ教えれる人間っていないだろ。
それをノアが見かねてな~・・最愛のお嬢様を殺されかけたってのに、ほんとお人よしなのな。アイツ。
それにノアは執行部の書類だろうがなんだろうが、全部こなせる上に腕も立つからな。護衛としても丁度いいってことらしいぞ。」
へ~である。へ~・・・。
・・皇太子様はシエラ嬢に愛ってなかったんかなぁ。
政略結婚は愛が無くても金があればするもんだとは、よく耳にするけどさ。
そういえばノアが皇太子様とシエラ嬢はほとんど話をしないって言ってたし。
ふ~ん・・へ~・・・と言いつつ、なんとか昼飯を腹に収めて、仕事へと戻ろうと食器を入れたトレーを手に席を立つ。
「あっ!カール先輩!」
ノアがオレを見つけて、よく通る声で呼びかけてきた。
「よ、よぉ、元気してっか?」
やめてっ、呼ばないでよっ、前に皇太子いるんだからっ。下手に目をつけられたら恨むぞノア! と内心、冷汗をかきながら返事をする。
そんなオレに気が付くこともなく、近寄ってきたノアは言葉を続ける。
「今度また、いいお店紹介してくださいね!? よろしくお願いします!」
「あ、あぁ。家に帰ったら、妹にでも聞いとくわ。」
だ~ら、だ~らと汗が背中を伝う・・待って?シエラ嬢と結婚したらノアって、公爵様なんじゃないの?ヤバイヤバイ、んな高い身分の人になんて口きいてん の?オレ。下手したら不敬罪よ?ふぉぉぉ~~っとめちゃめちゃ混乱してると、ノアと皇太子はなにやら話をしてたようで、ディートハルト殿下がオレに声をか けてきた。
「・・・カール先輩、是非に俺にもいい店の紹介よろしくお願いします。」
なんだかやたらと気迫に満ちたディートハルト殿下に、ガシッと握手された。
「ふぉっ!?」
やべぇ・・・変な声出た。
片手に持ってたトレーを落とさなかったオレって超えらい。
「こ、こちらこそよろしくお願いします?」
・・・真っ白になったオレ。泣いていいか。
その後、いい店ってなんだ、と皆に聞かれまくりました。
オレ、泣いてもいいよね?
ところでディートハルト殿下・・ノアを目標にするのはいいけど、無理しなきゃいいけどな。
ノアの仕事量、軽く人の3倍だぜ?
軍部でもノアに武力的に勝てるのってそうそういないし・・ベアーに笑いながら立ち向かってくヤツなんて、ノア以外にオレ見たことねぇよ。
昔はラドシール家の稚児って馬鹿にする奴らもいたけど、そういやぁ、あいつら逮捕されたんだっけか。
良かったなノア。努力した分だけ報われるってマジなんだな。
くそ~・・オレも可愛い嫁さん欲しいな~。
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塩飴
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自己紹介:
日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
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