EntryNavigation
黒幕は嗤う
PR
「ひどい男よね。親友で遊んで楽しいの?」
ディスプレィの明かりと、モーター音しか聞こえない部屋で、ディスプレィに向かって座る長い黒髪をした女が言う。
「あれ?レイちゃん、もしかして妬いちゃった?」
ニヤニヤと女の黒髪をもて遊びながら、小林 総一郎の同僚兼学友兼親友である榊 透吾が笑う。
その手をうっとおしそうに振り払いながら「けなしてんのよ。あんたが裏で工作してんの親友が知ったら、どんな顔するのかしらね。」レイと呼ばれた女が言う。
「やだなぁ。レイちゃん人聞きの悪い。
僕はね?総一郎に舞台を作ってあげただけだよ。
今時、ドラマみたいなことって起きないじゃない。日本は安全だからさぁ。
せっかく総一郎が一目惚れしたんだよ?
相手のコもイイコだったし。そんな二人が一緒に危機を乗り越えて幸せになりました。っていいストーリーじゃん?総一郎もさぁ、そろそろ幸せになってもいいと思うんだよね。」と、女を背後から抱きしめた。
その拍子に、机の上の書類が床に散らばる。
【佐藤 翠 調査報告書】
【前田 明美 調査報告書】
小林 総一郎と榊 透吾はいわゆる金持ち学園と呼ばれる所に通っていた。
高遠製鋼の現社長の孫(姓は親父のを名乗っている為、高遠ではない)ということで権力も財力もあった総一郎は鼻っ柱が高く、わがままでやりたい放題していた。
容姿、学力、運動にも優れていた為、女にモテ、青春を謳歌していたのだが、そこに転入してきたのが小森 七海という少女。
天真爛漫、純粋を絵に描いたような美少女、瞬く間に学園のマドンナになった。
総一郎も榊も含んだ他の男も彼女に好意を抱き、振り向いてもらうよう貢いだりしていたのだが、彼女は男を侍らすだけ侍らして、最後は年上の男とくっついた。
散々、愛を囁き、貢ぎ、便宜を図ってきた彼らを鼻で嗤うようにして。
「ごめんね?だってもっとたくさん欲しいのがあるの。学生のあなた達じゃ買えないでしょ?」と、嘲笑った彼女の顔が忘れられない。
学生とはいえ世間一般では金持ちに分類される彼ら。
そんな彼らは彼女が欲しいと言った装飾品は一も二もなく買い、行きたいと言う場所には高い金を出して彼女を連れて行った。
およそ学生の身分で使わないような金額を使って。
親がそのことに気がついた時には、すでにカードの上限金額をとっくに通り越した請求書の束が出来ており、そのことに激怒してなにに使ったのか問いただすが、女に貢いだとは矜持が高くて口に出来ず、結局の所、内定調査によって露見することになった。
その後、学生の間、カードは必要最低限の使用金額しか認められず。就職もコネを使うことが禁止、就職後は自力で生活することが義務づけられた。
しかしながら元々自力があった総一郎と榊は、ともに上場企業に就職を果たし、営業職を頑張ってきていたのだ。
容姿も良ければ、能力も高い彼らはやはり女にモテたが、「○○が欲しいな。」との言葉に過去のトラウマを触発され長続きはしなかった。
総一郎はそのうち仕事にのめり込んでしまい、合間合間にカノジョがいた様だが、いつの間にか別れている様子だった。
そんな中での一目惚れである。
これはなんとかして、結婚までもっていってもらおうと奮起したのが事の次第。
「でもね、これはやりすぎだと思うわ。このコ、犯歴がついちゃったんでしょう?」
画面に映るのは前田明美のグチッター。
『今日、会社のイケメン営業に恋愛相談されちゃった(*≧Δ≦)』
『えっ!?もしかして・・気があるんじゃないの?』
『やっぱり?やっぱそうだよね!?キャーヽ(≧▽≦)/』
『いいなー。かっこいいの?どういう系?』
『ワイルド系。マジかっこいいよ。身長高いし。』
『やったじゃん!奪っちゃいなよ(ゝω・)相手もそれを期待してるでしょ(≧∇≦)b』
『えー・・でも、お金持ちかなぁ(・_・、)』
『隠してるけど高遠製鋼の孫だよ。時期社長。』
『すっごいじゃん!玉の輿だよ!!狙っちゃえ~(*ゝω・*)ノ』
『いい方法書いてあるらしいよ。略奪スレのURL貼っておくね(ゝω・)
www://×××××.×××.××』
「誘導したのは僕だけど、それを実行したのは彼女自身だよ。自業自得ってものだね。・・・でも、おもしろかったな。自分のことじゃないから、皆、煽る煽る。匿名だから言いたい放題だし。」
「匿名だからこそ人間性でるんでしょ。」
「ほんとだね・・・あまりにも反応が可愛くて、ウィルス踏むよう誘導しようか迷っちゃったよ。おもしろいことになったろうねぇ。それともバックドアの方がおもしろかったかなぁ。」クスクスと暗く笑う榊。
「その顔、親友が知ったら幻滅されるわよ。榊。」
「安心して?レイちゃんの前だけだよ。あぁ、そうだ。総一郎がレイちゃんに結婚式これるか予定聞いててくれって言ってた。3月21日なんだって。」
「・・・予定もなにも・・・あんたが出してくれるなら行けるわよ。」
「そうだねぇ。久しぶりに外の空気を吸うのもいいかもね。着飾って一緒に行こうね。」
「・・・・・・・えぇ、そうね。」
ディスプレィの明かりと、モーター音しか聞こえない部屋で、ディスプレィに向かって座る長い黒髪をした女が言う。
「あれ?レイちゃん、もしかして妬いちゃった?」
ニヤニヤと女の黒髪をもて遊びながら、小林 総一郎の同僚兼学友兼親友である榊 透吾が笑う。
その手をうっとおしそうに振り払いながら「けなしてんのよ。あんたが裏で工作してんの親友が知ったら、どんな顔するのかしらね。」レイと呼ばれた女が言う。
「やだなぁ。レイちゃん人聞きの悪い。
僕はね?総一郎に舞台を作ってあげただけだよ。
今時、ドラマみたいなことって起きないじゃない。日本は安全だからさぁ。
せっかく総一郎が一目惚れしたんだよ?
相手のコもイイコだったし。そんな二人が一緒に危機を乗り越えて幸せになりました。っていいストーリーじゃん?総一郎もさぁ、そろそろ幸せになってもいいと思うんだよね。」と、女を背後から抱きしめた。
その拍子に、机の上の書類が床に散らばる。
【佐藤 翠 調査報告書】
【前田 明美 調査報告書】
小林 総一郎と榊 透吾はいわゆる金持ち学園と呼ばれる所に通っていた。
高遠製鋼の現社長の孫(姓は親父のを名乗っている為、高遠ではない)ということで権力も財力もあった総一郎は鼻っ柱が高く、わがままでやりたい放題していた。
容姿、学力、運動にも優れていた為、女にモテ、青春を謳歌していたのだが、そこに転入してきたのが小森 七海という少女。
天真爛漫、純粋を絵に描いたような美少女、瞬く間に学園のマドンナになった。
総一郎も榊も含んだ他の男も彼女に好意を抱き、振り向いてもらうよう貢いだりしていたのだが、彼女は男を侍らすだけ侍らして、最後は年上の男とくっついた。
散々、愛を囁き、貢ぎ、便宜を図ってきた彼らを鼻で嗤うようにして。
「ごめんね?だってもっとたくさん欲しいのがあるの。学生のあなた達じゃ買えないでしょ?」と、嘲笑った彼女の顔が忘れられない。
学生とはいえ世間一般では金持ちに分類される彼ら。
そんな彼らは彼女が欲しいと言った装飾品は一も二もなく買い、行きたいと言う場所には高い金を出して彼女を連れて行った。
およそ学生の身分で使わないような金額を使って。
親がそのことに気がついた時には、すでにカードの上限金額をとっくに通り越した請求書の束が出来ており、そのことに激怒してなにに使ったのか問いただすが、女に貢いだとは矜持が高くて口に出来ず、結局の所、内定調査によって露見することになった。
その後、学生の間、カードは必要最低限の使用金額しか認められず。就職もコネを使うことが禁止、就職後は自力で生活することが義務づけられた。
しかしながら元々自力があった総一郎と榊は、ともに上場企業に就職を果たし、営業職を頑張ってきていたのだ。
容姿も良ければ、能力も高い彼らはやはり女にモテたが、「○○が欲しいな。」との言葉に過去のトラウマを触発され長続きはしなかった。
総一郎はそのうち仕事にのめり込んでしまい、合間合間にカノジョがいた様だが、いつの間にか別れている様子だった。
そんな中での一目惚れである。
これはなんとかして、結婚までもっていってもらおうと奮起したのが事の次第。
「でもね、これはやりすぎだと思うわ。このコ、犯歴がついちゃったんでしょう?」
画面に映るのは前田明美のグチッター。
『今日、会社のイケメン営業に恋愛相談されちゃった(*≧Δ≦)』
『えっ!?もしかして・・気があるんじゃないの?』
『やっぱり?やっぱそうだよね!?キャーヽ(≧▽≦)/』
『いいなー。かっこいいの?どういう系?』
『ワイルド系。マジかっこいいよ。身長高いし。』
『やったじゃん!奪っちゃいなよ(ゝω・)相手もそれを期待してるでしょ(≧∇≦)b』
『えー・・でも、お金持ちかなぁ(・_・、)』
『隠してるけど高遠製鋼の孫だよ。時期社長。』
『すっごいじゃん!玉の輿だよ!!狙っちゃえ~(*ゝω・*)ノ』
『いい方法書いてあるらしいよ。略奪スレのURL貼っておくね(ゝω・)
www://×××××.×××.××』
「誘導したのは僕だけど、それを実行したのは彼女自身だよ。自業自得ってものだね。・・・でも、おもしろかったな。自分のことじゃないから、皆、煽る煽る。匿名だから言いたい放題だし。」
「匿名だからこそ人間性でるんでしょ。」
「ほんとだね・・・あまりにも反応が可愛くて、ウィルス踏むよう誘導しようか迷っちゃったよ。おもしろいことになったろうねぇ。それともバックドアの方がおもしろかったかなぁ。」クスクスと暗く笑う榊。
「その顔、親友が知ったら幻滅されるわよ。榊。」
「安心して?レイちゃんの前だけだよ。あぁ、そうだ。総一郎がレイちゃんに結婚式これるか予定聞いててくれって言ってた。3月21日なんだって。」
「・・・予定もなにも・・・あんたが出してくれるなら行けるわよ。」
「そうだねぇ。久しぶりに外の空気を吸うのもいいかもね。着飾って一緒に行こうね。」
「・・・・・・・えぇ、そうね。」
12月。初雪の舞う中で
前田明美の判決は初犯の為、実刑はなかったものの接近禁止令と慰謝料が命じられる。
実行犯である男達は騙されたということで注意勧告のみであった。
前田明美は途中、激高して「私だけが悪くないっ、ネットの皆だっていいって言ってた!あいつらにも責任あんだろ!それにミドリムシだって、こいつが金持ち だから玉の輿狙ってんだろう!?清純面してんじゃねぇよ。」と弁護士が制止するのも聞かず、暴言を吐いたので途中退席を言い渡された。
面と向かって暴言を吐かれた翠は、あまりのショックで倒れそうになるが気丈にも、最後まで判決が下るのを見届けた。
裁判が終わったのは夕刻に近い時間で、裁判所を出る頃には街路樹に巻かれたネオンがチカチカと点灯し始めていた。
翠と手を繋ぎながら無言で公園を歩く。
「すまん。翠。言ってなかったことがある。
俺・・・高遠製鋼継ぐんだ。たぶん、これからもこんなのが出てくるかもしれない。それでも俺と一緒に人生を歩いてくれないか?」
「でも・・・総一郎さん。私、なにも持ってない、平凡な女なんです。
平凡より・・・もっと悪いかな。お金もないし、なにも出来ないし、・・・親もいない。そんなのが総一郎さんのお嫁さんには・・・ふさわしくないよ。」
「・・・それでも俺は翠が欲しいよ。翠と一緒に桜見て、翠と一緒にいたい。
なぁ・・・頼むからうんって言ってくれ。翠のこと絶対守るから。」
翠の冷たい手を握りしめながら言う。
しばらく沈黙が続いた後、翠はこくりと頷いて「・・・私でいいのなら。」と言った。
空から白い雪がハラハラと舞い落ちる。
初雪を地面に着く前に掴むことができたら願いが叶うって教えてくれたのは誰だったかな、とふと思う。
ふわりと手の平に落ちてきた雪に、俺の願いは叶ったよ、とつぶやいた。
実行犯である男達は騙されたということで注意勧告のみであった。
前田明美は途中、激高して「私だけが悪くないっ、ネットの皆だっていいって言ってた!あいつらにも責任あんだろ!それにミドリムシだって、こいつが金持ち だから玉の輿狙ってんだろう!?清純面してんじゃねぇよ。」と弁護士が制止するのも聞かず、暴言を吐いたので途中退席を言い渡された。
面と向かって暴言を吐かれた翠は、あまりのショックで倒れそうになるが気丈にも、最後まで判決が下るのを見届けた。
裁判が終わったのは夕刻に近い時間で、裁判所を出る頃には街路樹に巻かれたネオンがチカチカと点灯し始めていた。
翠と手を繋ぎながら無言で公園を歩く。
「すまん。翠。言ってなかったことがある。
俺・・・高遠製鋼継ぐんだ。たぶん、これからもこんなのが出てくるかもしれない。それでも俺と一緒に人生を歩いてくれないか?」
「でも・・・総一郎さん。私、なにも持ってない、平凡な女なんです。
平凡より・・・もっと悪いかな。お金もないし、なにも出来ないし、・・・親もいない。そんなのが総一郎さんのお嫁さんには・・・ふさわしくないよ。」
「・・・それでも俺は翠が欲しいよ。翠と一緒に桜見て、翠と一緒にいたい。
なぁ・・・頼むからうんって言ってくれ。翠のこと絶対守るから。」
翠の冷たい手を握りしめながら言う。
しばらく沈黙が続いた後、翠はこくりと頷いて「・・・私でいいのなら。」と言った。
空から白い雪がハラハラと舞い落ちる。
初雪を地面に着く前に掴むことができたら願いが叶うって教えてくれたのは誰だったかな、とふと思う。
ふわりと手の平に落ちてきた雪に、俺の願いは叶ったよ、とつぶやいた。
11月。木枯らしはチャイムを鳴らす
「ようやく前田さん辞めたんだって?」
自分の机で書類を作っていると同僚が声をかけていた。
「あぁ、ようやく、だな。」
自主退職と勧告だけで済ましてあげるなんて優しいじゃん。と言われたが、実際にレイプ被害が起きたわけでないからあれが精一杯だと返す。
幸いと言うか、かろうじてと言うか、翠は今はところ無事だ。
今のところ、だ。
掲示板の書き込みだって消されたのは最近で、未だに翠の周辺には不審者がウロウロしている現状だ。
なるべく葵さんのところに泊まるようお願いしているが、葵さんのところにいつまでもお世話のになるわけにいかないし、隣人のシャインスターに出来る限り気をつけてやってくれとお願いしているが、毎日シャインスターがいるわけでもないので、心配は尽きることがない。
距離の離れてる現状にもどかしい思いをしていると、上司から東北方面の出張を打算された。
拠点を仙台にある支店にして、2週間程行ってほしいとの言葉に一も二もなく承諾する。
ほっと息を吐くと、上司に「佐藤さんのこと、十分気をつけてあげるんだよ。」と言われる。
どうやら気を使われていたらしい。
ありがたさに頭が下がる。
「翠、2週間よろしく頼む。」と声をかけると、「いえいえ、大したおかまいも出来ませんが、こちらこそよろしくお願いします。」と、翠は笑って部屋に招き入れてくれた。
翠との新婚にも似た生活はひたすら楽しかったが、朝夕の電車の中で、翠に手を伸ばそうとする輩が多いことに閉口するしかなかった。
いつもは女性専用車両に乗ってやり過ごしていたらしいのだが、翠の不安を考えると側にいれなかったことに後悔の念しか沸かなかった。
そんな中、同僚から電話が入る。
『前田さんに気をつけるんだよ。どうやら逆恨みしてるようだから。』同僚はあれからあの女のグチッターや、ブログを監視していたらしい。正直ありがたいが、そのスキルは一体どこで拾得しているのか不思議だ。俺が探した時は全然見つける事が出来なかったのに。
深夜ドンドンドンと、ドアを叩かれる。
「すいませーん。サトウミドリさんのお部屋ですかー。消防署の方から来た者です。夜分遅くにすいませーん。ドア開けてくださーい。」
ドアスコープを覗くが、姿を見られないように隠れているのか姿を確認する事ができなかった。
翠に携帯を持っていつでも通報出来るようにして隠れてろ、と指示をしてドアを開けると、数人の男達がニヤニヤしながら立っていた。
「なんの用ですか?」と尋ねると、
「あ?なんで男いんの?もしかして、もぅ始まってた?オレ達も混ぜてよ。」とニヤニヤしながらドアに手をかけようとする。
「なんの用かと聞いている。それにあんたら、消防員じゃないだろう。」なるべく平坦な声で話そうと思うが、いらだちで声が震える。
「はぁ?ミドリちゃんが寂しいから、お部屋でHしようって提案してきたんじゃねーか。自分が先に来たからって独り占めすんなよ。」と強引に部屋に入ろうとするので、その腕を捕まえて「どなたかとお間違えではありませんか?」と尋ねる。
「あぁ!?ミドリちゃんからメールくれたんだろ?その証拠にメールだって残ってんよ。」と、男は携帯の画面を開いて見せた。
【仙台在住のぉ、ミドリですぅ。
最近、寒くなってきたしぃ、人肌が恋しぃ。゜+(。ノдヽ。)゜+。
誰かミドリをあっためてほしぃな。即ヤリoK☆
連絡待ってまーす(*ゝω・*)ノ ×××@××××.××.××】
【ぉ返事ぁりがとぅ。
今日はミドリ、すっごいエッチな気分なんだ(*≧Δ≦)
だからたぁっくさんの人にアィして欲しぃな(〃・ω・〃)
お部屋は仙台市○○ ○○アパート3-3だょ。
合い言葉に消防の方から来たって言ってね☆
でないとドァ開けなぃよ(`Д´)
ぁと、ミドリとのメールは削除してね!!お・や・く・そ・く(ゝω∂)☆】
「な?俺らも招待客ってこと。どいてよ、色男のおにーさん。」
印籠のようにスマフォをかざす男。
「翠、警察に通報しろ。不審者が来たって。」
「はぁ!?なに言ってやがる。」男が慌てて逃げようとするのを捕まえる。
外にいた数人の男達も逃げようとするが、シャインスターに阻まれて逃げ出せないようだ。
「ダークネスファング!悪ノ組織成敗デスネ!?シャインスターの正義ノ鉄拳ヲ喰ラウトイイデス!」
シャインスターと二人で男達と格闘していると、階下から警察官が走ってきて取り押さえられた。
俺とシャインスターもろとも。
・・・つい、怒りに任せてぶん殴ってたからなぁ・・・・まぁ、反省していないが。
警察署でことのいきさつを説明すると、いくら数人いたから暴力振るったにしても、君のそのガタイで殴られたら君が加害者側になってしまうよと諭される。
好きな女一人守れない男よりはマシじゃないかと思うのだが、長居したくないので反省したフリをする。
別室にいた翠に会うと、泣きながら心配していた。
なんでドア開けちゃうのとか、俺がケガするんじゃないかと怖かったとか、まぁ、いろいろ。
最後の「ありがとう」という翠の声に翠が無事で良かったと神に感謝する。
俺が居るときで良かった。・・・・本当に。
後日、前田明美を強姦教唆で逮捕したと警察から連絡があった。
自分の机で書類を作っていると同僚が声をかけていた。
「あぁ、ようやく、だな。」
自主退職と勧告だけで済ましてあげるなんて優しいじゃん。と言われたが、実際にレイプ被害が起きたわけでないからあれが精一杯だと返す。
幸いと言うか、かろうじてと言うか、翠は今はところ無事だ。
今のところ、だ。
掲示板の書き込みだって消されたのは最近で、未だに翠の周辺には不審者がウロウロしている現状だ。
なるべく葵さんのところに泊まるようお願いしているが、葵さんのところにいつまでもお世話のになるわけにいかないし、隣人のシャインスターに出来る限り気をつけてやってくれとお願いしているが、毎日シャインスターがいるわけでもないので、心配は尽きることがない。
距離の離れてる現状にもどかしい思いをしていると、上司から東北方面の出張を打算された。
拠点を仙台にある支店にして、2週間程行ってほしいとの言葉に一も二もなく承諾する。
ほっと息を吐くと、上司に「佐藤さんのこと、十分気をつけてあげるんだよ。」と言われる。
どうやら気を使われていたらしい。
ありがたさに頭が下がる。
「翠、2週間よろしく頼む。」と声をかけると、「いえいえ、大したおかまいも出来ませんが、こちらこそよろしくお願いします。」と、翠は笑って部屋に招き入れてくれた。
翠との新婚にも似た生活はひたすら楽しかったが、朝夕の電車の中で、翠に手を伸ばそうとする輩が多いことに閉口するしかなかった。
いつもは女性専用車両に乗ってやり過ごしていたらしいのだが、翠の不安を考えると側にいれなかったことに後悔の念しか沸かなかった。
そんな中、同僚から電話が入る。
『前田さんに気をつけるんだよ。どうやら逆恨みしてるようだから。』同僚はあれからあの女のグチッターや、ブログを監視していたらしい。正直ありがたいが、そのスキルは一体どこで拾得しているのか不思議だ。俺が探した時は全然見つける事が出来なかったのに。
深夜ドンドンドンと、ドアを叩かれる。
「すいませーん。サトウミドリさんのお部屋ですかー。消防署の方から来た者です。夜分遅くにすいませーん。ドア開けてくださーい。」
ドアスコープを覗くが、姿を見られないように隠れているのか姿を確認する事ができなかった。
翠に携帯を持っていつでも通報出来るようにして隠れてろ、と指示をしてドアを開けると、数人の男達がニヤニヤしながら立っていた。
「なんの用ですか?」と尋ねると、
「あ?なんで男いんの?もしかして、もぅ始まってた?オレ達も混ぜてよ。」とニヤニヤしながらドアに手をかけようとする。
「なんの用かと聞いている。それにあんたら、消防員じゃないだろう。」なるべく平坦な声で話そうと思うが、いらだちで声が震える。
「はぁ?ミドリちゃんが寂しいから、お部屋でHしようって提案してきたんじゃねーか。自分が先に来たからって独り占めすんなよ。」と強引に部屋に入ろうとするので、その腕を捕まえて「どなたかとお間違えではありませんか?」と尋ねる。
「あぁ!?ミドリちゃんからメールくれたんだろ?その証拠にメールだって残ってんよ。」と、男は携帯の画面を開いて見せた。
【仙台在住のぉ、ミドリですぅ。
最近、寒くなってきたしぃ、人肌が恋しぃ。゜+(。ノдヽ。)゜+。
誰かミドリをあっためてほしぃな。即ヤリoK☆
連絡待ってまーす(*ゝω・*)ノ ×××@××××.××.××】
【ぉ返事ぁりがとぅ。
今日はミドリ、すっごいエッチな気分なんだ(*≧Δ≦)
だからたぁっくさんの人にアィして欲しぃな(〃・ω・〃)
お部屋は仙台市○○ ○○アパート3-3だょ。
合い言葉に消防の方から来たって言ってね☆
でないとドァ開けなぃよ(`Д´)
ぁと、ミドリとのメールは削除してね!!お・や・く・そ・く(ゝω∂)☆】
「な?俺らも招待客ってこと。どいてよ、色男のおにーさん。」
印籠のようにスマフォをかざす男。
「翠、警察に通報しろ。不審者が来たって。」
「はぁ!?なに言ってやがる。」男が慌てて逃げようとするのを捕まえる。
外にいた数人の男達も逃げようとするが、シャインスターに阻まれて逃げ出せないようだ。
「ダークネスファング!悪ノ組織成敗デスネ!?シャインスターの正義ノ鉄拳ヲ喰ラウトイイデス!」
シャインスターと二人で男達と格闘していると、階下から警察官が走ってきて取り押さえられた。
俺とシャインスターもろとも。
・・・つい、怒りに任せてぶん殴ってたからなぁ・・・・まぁ、反省していないが。
警察署でことのいきさつを説明すると、いくら数人いたから暴力振るったにしても、君のそのガタイで殴られたら君が加害者側になってしまうよと諭される。
好きな女一人守れない男よりはマシじゃないかと思うのだが、長居したくないので反省したフリをする。
別室にいた翠に会うと、泣きながら心配していた。
なんでドア開けちゃうのとか、俺がケガするんじゃないかと怖かったとか、まぁ、いろいろ。
最後の「ありがとう」という翠の声に翠が無事で良かったと神に感謝する。
俺が居るときで良かった。・・・・本当に。
後日、前田明美を強姦教唆で逮捕したと警察から連絡があった。
閑話 初任給の使い方
同僚「そういえばミドリちゃんに指輪買ってあげた?」
昼飯を食いながら問いかけてきた同僚。
総一郎「・・いや、買おうとしたら翠にいらないって言われた。」
同僚「へぇ、珍しい。なに?金属アレルギー?」
総一郎「金属アレルギーもあるようだが・・・こだわりというか・・まぁ、あってな。」
同僚「え。なになに?どんなこだわり?」
総一郎「硬度と溶解温度だ。」
同僚「・・・・はい?」
総一郎「金や銀は火災にあうと大抵変形するらしい。プラチナは原型とどめてるのが多いらしいが、金属の理想はタングステンらしい。石も同様だな。色が剥脱したり、変わったりするから石メインにしてるのはあまり好きじゃないそうだ。むしろ石はなくていいらしい。」
同僚「タングステン!?いや、でもアレって、リングカッターでも切れないってよく聞くよね?」
総一郎「あぁ、『それが問題なんですよね』って、翠も言ってた。それにデザインもこだわりがあってだな。名前がガッツリ入ってるのがいいらしい。イニシャルよりフルネームが好ましいそうだ。」
同僚「Soichiro to Midoriとか?文字数多いね。ホビットの持ってる指輪みたいになっちゃいそう。てか、ソレ結婚指輪じゃん?」
総一郎「あぁ、だから俺がそれはあげるからって言っておいた。」
同僚「あっそ、ごちそうさまです~。いやぁ、小林君がのろけるなんて明日は槍が降るねぇ。」
総一郎「のろけか?指輪贈ること承諾させるの大変だったんだぞ?なんせ、翠、初任給で耐火金庫買うつもりだったからな?」
同僚「・・・・は!?・・・小林君、まさかバレてた?」
総一郎「・・・バレてたら俺に他社の耐火金庫と、どっちかいいかなんて聞かないだろう。真剣に仕様を検討してたよ。ダイアル式とシリンダー錠のどちらかで悩んでるらしいが、ダイアル式がロマンがあるそうだ。」
同僚「ごめん。ダイアル式にロマンとか僕、感じたことないわ。」
総一郎「奇遇だな。俺もだ。」
翠の欲しがってた耐火金庫は俺の親父に相談することにした。
さすがに初任給での買い物が耐火金庫って悲しすぎる。
『泥にまみれてても、金庫の中に入れてれば原型留めてるんですよ。
私ね、大事なものはちゃんと保管するべきなんだって実感したんです。
貸金庫も考えたんですけど、中身が写真とかって恐れ多いというか、入れてもいいんですか?って感じで・・・家庭用の耐火金庫にしようと思ったんです。』と、真剣に仕様書を見る翠。本気で購入を考えているのだろう、簡易のから業務用のまで幅広い金庫の仕様書の束があった。
「親父んとこに中古あるらしい。希望とかあるなら言ってみたら?」
と電話を翠に渡すと、翠は驚きながらも電話を受け取って親父と話していた。
最初は自分で買うから結構です。と話していたのだが、親父と仕様について詳しく話しているうちに鍵のロマンを楽しそうに話していた。
主流はテンキー式かもしれないが、それだとロマンがないじゃないですかって・・・すまん。翠、俺にはダイアル式も、テンキー式も、シリンダー錠も、磁気ロックも、指紋認証も皆一緒に見える。
なににロマンを感じるのか全く分からないのだが、同じようにロマンを感じているらしい親父に「いいの見つけておくから楽しみにしてて。」と上機嫌で電話を切られた。
翌週、翠の小さなアパートに耐火金庫が届く。
配送業者2名がかりで運ばれてきた60㌔の耐火金庫。
「こ、これはっ、耐火3時間、防水仕様の業界最高峰の高遠製鋼の耐火金庫っ。
えぇぇ!?ものすごい高い物ですよ?受け取れませんよ。どうしよう。」と、おろおろしている翠を尻目に、受領書にサインして配送業者を帰す。
「総一郎さん、どうしましょう。受け取れないです。配送業者さんもう一度呼んでください。」と、涙目の翠に「余ってるものだから。倉庫で腐らしてるより翠 が使ってくれた方がいいんだよ。それに配送業者帰しちゃったし。」と納得させる。が、翠がどうしても礼がしたいと言うので一緒に大吟醸買いに行き宅配で頼 んだ。
晩に「大吟醸が届いた」との電話がお袋からかかってきた。
翠が何度も何度もお礼を言う。
「あらあら、いいのよぅ。そこまで喜んでくれたらお父さん喜ぶわぁ。
こちらこそお酒ありがとうねぇ。うふふ、今日はお父さんと一杯飲んじゃうわぁ。」と電話口からお袋の声が漏れ聞こえる。
翠はひたすら礼を言い、しばらくして電話を切ると、翠が静かに泣いてた。
「・・・翠?・・・どうした?お袋になんか言われたのか?」
驚いて問いただすと、翠はどこか焦点のあってない目をしながらしばらく泣き続けた。
「・・・思い出したんです。
兄が初めての給料で両親にお酒を贈ってたの。
すごい喜んでくれてて、私も就職したら最初に両親にお酒を贈ろうって思ったの思い出しちゃって・・・・。
・・・ありがとうございます。総一郎さん。私の夢、一つ叶った気がします。」
涙を流す翠を抱きしめながら、改めて大事にしようと決意した。
昼飯を食いながら問いかけてきた同僚。
総一郎「・・いや、買おうとしたら翠にいらないって言われた。」
同僚「へぇ、珍しい。なに?金属アレルギー?」
総一郎「金属アレルギーもあるようだが・・・こだわりというか・・まぁ、あってな。」
同僚「え。なになに?どんなこだわり?」
総一郎「硬度と溶解温度だ。」
同僚「・・・・はい?」
総一郎「金や銀は火災にあうと大抵変形するらしい。プラチナは原型とどめてるのが多いらしいが、金属の理想はタングステンらしい。石も同様だな。色が剥脱したり、変わったりするから石メインにしてるのはあまり好きじゃないそうだ。むしろ石はなくていいらしい。」
同僚「タングステン!?いや、でもアレって、リングカッターでも切れないってよく聞くよね?」
総一郎「あぁ、『それが問題なんですよね』って、翠も言ってた。それにデザインもこだわりがあってだな。名前がガッツリ入ってるのがいいらしい。イニシャルよりフルネームが好ましいそうだ。」
同僚「Soichiro to Midoriとか?文字数多いね。ホビットの持ってる指輪みたいになっちゃいそう。てか、ソレ結婚指輪じゃん?」
総一郎「あぁ、だから俺がそれはあげるからって言っておいた。」
同僚「あっそ、ごちそうさまです~。いやぁ、小林君がのろけるなんて明日は槍が降るねぇ。」
総一郎「のろけか?指輪贈ること承諾させるの大変だったんだぞ?なんせ、翠、初任給で耐火金庫買うつもりだったからな?」
同僚「・・・・は!?・・・小林君、まさかバレてた?」
総一郎「・・・バレてたら俺に他社の耐火金庫と、どっちかいいかなんて聞かないだろう。真剣に仕様を検討してたよ。ダイアル式とシリンダー錠のどちらかで悩んでるらしいが、ダイアル式がロマンがあるそうだ。」
同僚「ごめん。ダイアル式にロマンとか僕、感じたことないわ。」
総一郎「奇遇だな。俺もだ。」
翠の欲しがってた耐火金庫は俺の親父に相談することにした。
さすがに初任給での買い物が耐火金庫って悲しすぎる。
『泥にまみれてても、金庫の中に入れてれば原型留めてるんですよ。
私ね、大事なものはちゃんと保管するべきなんだって実感したんです。
貸金庫も考えたんですけど、中身が写真とかって恐れ多いというか、入れてもいいんですか?って感じで・・・家庭用の耐火金庫にしようと思ったんです。』と、真剣に仕様書を見る翠。本気で購入を考えているのだろう、簡易のから業務用のまで幅広い金庫の仕様書の束があった。
「親父んとこに中古あるらしい。希望とかあるなら言ってみたら?」
と電話を翠に渡すと、翠は驚きながらも電話を受け取って親父と話していた。
最初は自分で買うから結構です。と話していたのだが、親父と仕様について詳しく話しているうちに鍵のロマンを楽しそうに話していた。
主流はテンキー式かもしれないが、それだとロマンがないじゃないですかって・・・すまん。翠、俺にはダイアル式も、テンキー式も、シリンダー錠も、磁気ロックも、指紋認証も皆一緒に見える。
なににロマンを感じるのか全く分からないのだが、同じようにロマンを感じているらしい親父に「いいの見つけておくから楽しみにしてて。」と上機嫌で電話を切られた。
翌週、翠の小さなアパートに耐火金庫が届く。
配送業者2名がかりで運ばれてきた60㌔の耐火金庫。
「こ、これはっ、耐火3時間、防水仕様の業界最高峰の高遠製鋼の耐火金庫っ。
えぇぇ!?ものすごい高い物ですよ?受け取れませんよ。どうしよう。」と、おろおろしている翠を尻目に、受領書にサインして配送業者を帰す。
「総一郎さん、どうしましょう。受け取れないです。配送業者さんもう一度呼んでください。」と、涙目の翠に「余ってるものだから。倉庫で腐らしてるより翠 が使ってくれた方がいいんだよ。それに配送業者帰しちゃったし。」と納得させる。が、翠がどうしても礼がしたいと言うので一緒に大吟醸買いに行き宅配で頼 んだ。
晩に「大吟醸が届いた」との電話がお袋からかかってきた。
翠が何度も何度もお礼を言う。
「あらあら、いいのよぅ。そこまで喜んでくれたらお父さん喜ぶわぁ。
こちらこそお酒ありがとうねぇ。うふふ、今日はお父さんと一杯飲んじゃうわぁ。」と電話口からお袋の声が漏れ聞こえる。
翠はひたすら礼を言い、しばらくして電話を切ると、翠が静かに泣いてた。
「・・・翠?・・・どうした?お袋になんか言われたのか?」
驚いて問いただすと、翠はどこか焦点のあってない目をしながらしばらく泣き続けた。
「・・・思い出したんです。
兄が初めての給料で両親にお酒を贈ってたの。
すごい喜んでくれてて、私も就職したら最初に両親にお酒を贈ろうって思ったの思い出しちゃって・・・・。
・・・ありがとうございます。総一郎さん。私の夢、一つ叶った気がします。」
涙を流す翠を抱きしめながら、改めて大事にしようと決意した。
********************************************
総一郎「・・・親父、ありがとうな。」
親父「喜んでくれたかい?翠ちゃん。・・・いい娘じゃないか、大事にしろよ。」
総一郎「・・・分かってる。じゃあな。」
------------------------------------
親父「母さん、母さん、総一郎からお礼なんて言われちゃったよ!」
お袋「あらあらあら、お父さんったら。良かったわねぇ。・・やぁねぇ泣いちゃって、歳とると涙腺って弱くなるのねぇ。」
親父「喜んでくれたかい?翠ちゃん。・・・いい娘じゃないか、大事にしろよ。」
総一郎「・・・分かってる。じゃあな。」
------------------------------------
親父「母さん、母さん、総一郎からお礼なんて言われちゃったよ!」
お袋「あらあらあら、お父さんったら。良かったわねぇ。・・やぁねぇ泣いちゃって、歳とると涙腺って弱くなるのねぇ。」
10月。ゴミはゴミの日に
「ダークネスファング!悪ノ組織来マシタ!成敗シタライイデスカ!?」
「落ち着けっ!翠は無事なのか!?」
19時30分。シャインスターからの電話に衝撃を受けつつ、状況を聞き出していく。
シャインスター曰く、翠につきまとう悪ノ組織は日に日に数を増し、ついにはアパート近辺まで姿を見せ始めたらしい。
前に行った時に表札は取り払ってきたので部屋の特定はまだのようだが、隣であるシャインスターの部屋に悪ノ組織らしき人物が訪ねてきたとの事。
・・・シャインスターの部屋はカーテンもインテリアもピンク色。いかにも女性の部屋に見えるから間違えたのだろう。
すぐさま翠に電話をして無事を確かめる。
「大丈夫・・・ですよ?でもちょっと気味悪いです。」
「なにかあったらすぐ俺に電話しろ。家に帰る時もだ。
誰か訪ねてきても無視しろ。宅配便だとしてもだ。本物なら不在通知入れておくハズだから、後で呼んで受け取ればいい。どうしてもドアを開ける時はドアチェーンしろ。」
その他にも、いろいろと注意してくれと言って電話を切った。
あぁ・・・くそ、すぐ行ける距離にいないことが悔しい。
「小林君どうしたの。めっちゃ顔怖いんですけど。」
「翠のアパートまで悪の組織が来ているらしい。」
「悪の組織?」
いかん。動揺している。
同僚に状況をかいつまんで説明する。
「プロバイダはIPの開示と書き込みの削除に応じた?」
「いや、弁護士を通しているがのらりくらりとのばされてる。」
話しをしながらもカタカタとキーボードを叩く同僚。
「他のサイトにも書き込んでるね。・・・ひどいな。小林君はこれ、名誉毀損で止めるの?たぶん強姦教唆までいけると思うよ。女の子だし。」
「・・・あぁ、お前の場合、男だから適用されないってツッパネられたんだっけか。」
「ひどいよねー。男でも女でも被害に会ったら傷つくのに。はい、コレ。SSとログ。頑張って!僕の分もやっちまいなー!」
「すまん、助かる。
しかし、お前の分って・・お前、相手の男ボコボコにしたじゃないか。過剰防衛手前だったって俺は聞いたぞ。」
「いいじゃん?どうせキモい顔だったし、鼻が右向いていようが、左向いていようが大差ないよ。」
受け取ったUSBメモリを手に弁護士に連絡すべく席を立つ。
それから相談してた上司に声をかけ、午後に本人召喚の上、勧告をすることに決める。
庶務室に行き、あの女に15時にミーティングルームに来るよう告げると、あの女は「きゃっ、なんですぅ?デートのお誘いなら会社よりレストランの方が嬉しいんですけどぉ。」と、まつげをパチパチと鳴らしながら言いやがった。
自分がやってることがバレてるなんて思いもしないのだろうか。
バカすぎる。
15時。
弁護士、上司とともにミーティングルームで待っていると、10分も遅れてあの女が部屋に入ってきた。
「ごめんなさぁい、髪の毛がきまらなくってぇ」などと言いながら入った女は、俺以外にも人がいることに気がついてギョッとしていた。
甘ったるい香水の臭いが漂ってきて、更に気分が悪くなる。
「前田明美さんですね?初めまして。弁護士の渡邉と申します。佐藤翠さんに対する名誉毀損と強姦教唆の件で話し合いにまいりました。どうぞ、席にご着席を。」
弁護士が着席を促す。
そこからの会話は思い出すだけで頭痛がするほどひどいものになった。
あの女はそんなの知らない、自分ではない、証拠がないなど言っていたが、翠の名を騙って男を煽る写真とプリントアウトされた掲示板の文章、会社PCのログを前に頭を垂れた。
ぐずっ、ぐずっ、と鼻を鳴らしながら泣いて謝罪していたが、会社を自主退職すること、翠に近づかないことを告げると髪を振り乱して「なんでそこまでしなく ちゃいけないの!?ごめんって謝ってるじゃない!どうせあのミドリムシだって、ウリくらいやってんでしょ!?親が死んでるんだからっ。」と、暴言を吐い た。
カッとなって思わず立ち上がろうとするのを、隣の上司に腕を捕まれて止められる。
弁護士の「警察に行くことだって出来るのですよ?慰謝料も請求しない、大した温情だと思っていたのですが、これではそれも出来そうにありませんね。」と冷静な言葉に、あの女は顔を蒼白にした。
・・・疲れた。
あぁ、翠に会いたいなぁ。
「落ち着けっ!翠は無事なのか!?」
19時30分。シャインスターからの電話に衝撃を受けつつ、状況を聞き出していく。
シャインスター曰く、翠につきまとう悪ノ組織は日に日に数を増し、ついにはアパート近辺まで姿を見せ始めたらしい。
前に行った時に表札は取り払ってきたので部屋の特定はまだのようだが、隣であるシャインスターの部屋に悪ノ組織らしき人物が訪ねてきたとの事。
・・・シャインスターの部屋はカーテンもインテリアもピンク色。いかにも女性の部屋に見えるから間違えたのだろう。
すぐさま翠に電話をして無事を確かめる。
「大丈夫・・・ですよ?でもちょっと気味悪いです。」
「なにかあったらすぐ俺に電話しろ。家に帰る時もだ。
誰か訪ねてきても無視しろ。宅配便だとしてもだ。本物なら不在通知入れておくハズだから、後で呼んで受け取ればいい。どうしてもドアを開ける時はドアチェーンしろ。」
その他にも、いろいろと注意してくれと言って電話を切った。
あぁ・・・くそ、すぐ行ける距離にいないことが悔しい。
「小林君どうしたの。めっちゃ顔怖いんですけど。」
「翠のアパートまで悪の組織が来ているらしい。」
「悪の組織?」
いかん。動揺している。
同僚に状況をかいつまんで説明する。
「プロバイダはIPの開示と書き込みの削除に応じた?」
「いや、弁護士を通しているがのらりくらりとのばされてる。」
話しをしながらもカタカタとキーボードを叩く同僚。
「他のサイトにも書き込んでるね。・・・ひどいな。小林君はこれ、名誉毀損で止めるの?たぶん強姦教唆までいけると思うよ。女の子だし。」
「・・・あぁ、お前の場合、男だから適用されないってツッパネられたんだっけか。」
「ひどいよねー。男でも女でも被害に会ったら傷つくのに。はい、コレ。SSとログ。頑張って!僕の分もやっちまいなー!」
「すまん、助かる。
しかし、お前の分って・・お前、相手の男ボコボコにしたじゃないか。過剰防衛手前だったって俺は聞いたぞ。」
「いいじゃん?どうせキモい顔だったし、鼻が右向いていようが、左向いていようが大差ないよ。」
受け取ったUSBメモリを手に弁護士に連絡すべく席を立つ。
それから相談してた上司に声をかけ、午後に本人召喚の上、勧告をすることに決める。
庶務室に行き、あの女に15時にミーティングルームに来るよう告げると、あの女は「きゃっ、なんですぅ?デートのお誘いなら会社よりレストランの方が嬉しいんですけどぉ。」と、まつげをパチパチと鳴らしながら言いやがった。
自分がやってることがバレてるなんて思いもしないのだろうか。
バカすぎる。
15時。
弁護士、上司とともにミーティングルームで待っていると、10分も遅れてあの女が部屋に入ってきた。
「ごめんなさぁい、髪の毛がきまらなくってぇ」などと言いながら入った女は、俺以外にも人がいることに気がついてギョッとしていた。
甘ったるい香水の臭いが漂ってきて、更に気分が悪くなる。
「前田明美さんですね?初めまして。弁護士の渡邉と申します。佐藤翠さんに対する名誉毀損と強姦教唆の件で話し合いにまいりました。どうぞ、席にご着席を。」
弁護士が着席を促す。
そこからの会話は思い出すだけで頭痛がするほどひどいものになった。
あの女はそんなの知らない、自分ではない、証拠がないなど言っていたが、翠の名を騙って男を煽る写真とプリントアウトされた掲示板の文章、会社PCのログを前に頭を垂れた。
ぐずっ、ぐずっ、と鼻を鳴らしながら泣いて謝罪していたが、会社を自主退職すること、翠に近づかないことを告げると髪を振り乱して「なんでそこまでしなく ちゃいけないの!?ごめんって謝ってるじゃない!どうせあのミドリムシだって、ウリくらいやってんでしょ!?親が死んでるんだからっ。」と、暴言を吐い た。
カッとなって思わず立ち上がろうとするのを、隣の上司に腕を捕まれて止められる。
弁護士の「警察に行くことだって出来るのですよ?慰謝料も請求しない、大した温情だと思っていたのですが、これではそれも出来そうにありませんね。」と冷静な言葉に、あの女は顔を蒼白にした。
・・・疲れた。
あぁ、翠に会いたいなぁ。
*********************************************************
同僚「過剰防衛手前っていっても、鼻と足折って、頬骨陥没させた程度だよ。」
総一郎「それ、十分過剰防衛じゃないか?」
同僚「きっと元の顔が酷すぎてケガにカウントされなかったんだよ。」
総一郎「それ、十分過剰防衛じゃないか?」
同僚「きっと元の顔が酷すぎてケガにカウントされなかったんだよ。」
プロフィール
HN:
塩飴
性別:
非公開
自己紹介:
日々、仕事と家事に追われながら趣味を増やそうと画策するネコ好き。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
小説とイラストを置いております。
著作権は放棄しておりませんので、無断転載はしないでください。
最新記事
P R