塩飴の倉庫 令嬢と護衛の話6 忍者ブログ
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とある薬剤師の独白



王宮に激震が走る、と言うのだろうか。
皇太子付きの近衛が持ち込んだ毒は王妃殺害に用いられた毒であった。
あの事件以降、一切世に出てこなかった毒。
入手先もつかめず、幻とまで言われた毒。

それが今、王宮にある。



あの事件以降、王宮は火を落としたかのように寂しいものになった。
いつも華やかな笑みをたたえた王妃。
賢妃と評される程に賢い人だった。
そして王妃の友人2人も・・・明るくて屈託のない笑みを浮かべるご婦人達であった。
仲の良い3人は、よく自分達の子ども達も連れて王宮の庭でお茶会を開いていた。
遠目に見たことがあるが1枚の絵画のように穏やかで美しい光景だった。

それがあの事件で消えてしまった。



王妃の葬儀後、王宮でこの事件の話しをすることはタブーとなった。
まだ幼い皇太子の心情を慮ってのことである。
事件以前に婚約したラドシール公爵家の幼い令嬢は、滅多に王宮に姿を見せなくなった。
無理もない。
目の前で母親が苦しみもがく様を見たのだから。
父であるラドシール公爵もよほどの事が無い限り、令嬢を王宮には連れてこない。
王宮には王や皇太子に見初められようと着飾った娘を連れてくる貴族がほとんどという中、ラドシール公爵の有り様は浮いていた。
しかし、それでも公爵家の発言力は強く、どの貴族もわが娘をとは声を出して言えなかった。
6公爵の内、ラドシール家にしか皇太子と年齢の釣り合う女児がいなかったというせいでもある。
ラドシール家以外の公爵家には男子しか産まれず、皇太子の良き遊び相手となっていた。


長い間、王宮には、皇太子と公爵家の嫡男達の遊ぶ声くらいしか華やかな声はなかった。





皇太子が18歳の秋のことである。
あの毒がまた王宮に持ち込まれたのは。
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