塩飴の倉庫 令嬢と護衛の話2 忍者ブログ
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とある護衛の独白




俺は今、がむしゃらに走っている。

当家の令嬢であり、俺が護衛しているシエラ様の処刑を止める為に。


シエラ様が処刑されると発表されたのは、あの悪夢のような日からすぐのことだった。






数日前、無記名の呼び出しの手紙を受け取ったシエラ様と共に向かった教室。
そこにはたくさんの生徒が集まっていた。
シエラ様が近づくと、ザザっと音がなるように道が空けられた。

そこにあったのは無残な机と、涙を流す少女。
少女を慰めるように肩を抱くのはシエラ様の婚約者である皇太子だった。
取り巻くように公爵家の嫡男達もいた。

訳が分からないままに近づくと、突然、少女が顔を上げ、シエラ様を指さしつつ叫んだ。

「この人がやったのよ」

意味が分からない。
なぜ、シエラ様がそんな事をしなくてはならない?
大体、シエラ様はこの教室に来たことはない。
騒々しくわめきたてる少女に声すらかけたことはないはずだ。
なのになぜ、イジメや嫌がらせ、更には暗殺されかけたとこの少女は訴えるのだろう。


怒りと屈辱で握りしめた手が震える。
抗議の声を上げようとした時、真っ青な顔をしたシエラ様にそっと腕を引っ張られた。
青い顔で今にも倒れそうなシエラ様。
ハっと、自分の職務を思いだし、抱え込んで屋敷へと連れ帰った。


部屋へシエラ様をお連れし、急いで当主であるシエラ様の父君の元へ報告に行く。
・・・・王宮は騒然としていた。
当主である父君は宰相や、公爵家、なにやら分からないくらいたくさんの人に囲まれて叱責されていた。


・・・・・・・・・・・・・・・・
「犯した罪の責任は取らせるべきだ」
「皇太子の婚約者には相応しくない」
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・
「シエラ嬢を処刑しろ」



なぜだ。
なぜ、なにもしていないシエラ様がなぜ処刑されなくてはならないっ。
あの方はただ・・静かに毎日を暮していただけじゃないか。
静かに微笑んで・・・なにもしてはいない。
なぜ、シエラ様が学園であった事件の犯人にされている!?
訳がわからない。


そこからは必死だった。
あの少女が言ったイジメだの、嫌がらせだの、暗殺事件だのの詳細をつきとめ、目撃者を探し、証拠を集めるのに必死に走った。


正直、シエラ様がそういった学園内の喧噪とは無縁の静かな環境にいつも居たから、俺は学園内で起きたことに詳しくない。
噂話程度に聞いていただけだ。
平民に産ませた庶子を男爵家が引き取っただの、その少女が学園に途中入学してきただの、
その少女にシエラ様の婚約者である皇太子や公爵家の嫡男達が恋をささやいているのだの、そのことに嫉妬した取り巻き達が騒いでるのなんて、関係ないと思っていた。
シエラ様の婚約者である皇太子が、渦中の人である少女に傅いているのを見た時はさすがにこれはいけない、とは思いはしたが、所詮は一過性の恋だと思っていた。
だってそうだろう?
たかだか平民出身の娘が、国の頂点である皇太子の横に並べるとでも思うか?


それが・・・それが・・・・。
くそっ・・なんでこんなことになった。

必死に情報や証拠を集めた結果、ほとんどのイジメや嫌がらせは、取り巻き達の仕業だった。
少女が毒を盛られたという暗殺事件は、犯人が見つからない。
というか、本人以外に出来ない状況だった。

なぜ、誰もそのことを指摘しないっ。
どうしてシエラ様がその犯人になりえると言うのだ。

証拠を持ち、必死に俺は走る。
シエラ様を処刑させない為に。
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